補助犬ユーザー受け入れガイドブック:医療機関編 “誰もが安心して病院を利用するために” 第 1 版 (令和 3 年)

【イラスト】病院のベッドに寝ている女性のそばに、女性の盲導犬ユーザーと伏せている盲導犬

はじめに


身体障害者補助犬(以下、補助犬)は、障害のある人の生活に大きな役割を果たしています。しかし、補助犬との生活が叶ったとしても、様々な施設等で補助犬の同伴拒否が、しばしば報告されています。残念ながら医療機関での受け入れ拒否の事例は多く報告されています。補助犬と暮らす障害のある人(以下、補助犬ユーザー)には視覚、聴覚、肢体等に障害があるため、病院の利用は必要不可欠です。そのため、医療機関が補助犬ユーザーの受け入れの模範となっていただきたいと思います。これは法令順守(コンプライアンス)の観点からも、非常に大切なことです。

補助犬の同伴を受け入れることは、誰もがその人らしい自立した生活を送ることのできる社会につながります。

補助犬の同伴拒否に関して、人々の関心は「犬」の受け入れに注目が向きがちですが、実際には、補助犬の同伴を受け入れることは、「犬」の受け入れを求めているのではなく、基本的な「権利」の保障を求めているのです。つまり、補助犬を断ることは障害のある人自身を断ることと同じといえます。障害があることや補助犬を同伴していることが、社会参加の壁になるようなことがあってはなりません。一方、補助犬法は、補助犬ユーザーが補助犬とともに自立した社会参加の実現を推進していくために、犬の適切な管理という義務を補助犬ユーザーに課しています。これにより補助犬ユーザーの一層の社会参加を推進しようという理念があります。医療機関を含むすべての施設等において、補助犬を必要とする人の権利が保障される社会が望まれます。

しかし、その一方で、補助犬ユーザーを受け入れる医療機関は、「補助犬は安全なのだろうか」「補助犬ユーザーへの対応が分からない」「他の来院者の反応が心配」など、多くの不安を抱えているかもしれません。本ガイドブックは、医療機関における様々な場面を想定した対応例や実例をふまえて、補助犬ユーザーはもちろんのこと、医療機関を利用する他の来院者や面会者、さらには、施設のスタッフなど、『すべての人が安心して補助犬の同伴を受け入れられる社会の創造』を掲げて作成しました。誰もが安心して利用できる病院づくりに向けて、本ガイドブックを少しでも役立てていただければ幸いです。

【イラスト】聴導犬を抱きしめているユーザーの周りに、高齢者、妊婦、見えない人、子ども、外国人
誰もがその人らしい生活を送ることのできる社会をめざして

内容

はじめに ・・・・・1

1.理解すべき理念と法令順守(コンプライアンス)の推進・・・・・5

1-1.身体障害者補助犬法・・・・・5

1-2.障害者差別解消法・・・・・ 6

1-3.法令順守(コンプライアンス)を推進する・・・・・7

2.補助犬ユーザーと補助犬・・・・・8

2-1.補助犬ユーザー・・・・・8

(1)盲導犬ユーザー・視覚に障害のある人・・・・・9

(2)介助犬ユーザー・肢体不自由のある人・・・・・9

(3)聴導犬ユーザー・聴覚に障害のある人・・・・・9

2-2.補助犬の役割・・・・・10

2-3.補助犬に関わる認定・・・・・11

2-4.補助犬の管理・・・・・15

2-5.補助犬と社会のかかわり・・・・・18

(1)補助犬の衛生管理・・・・・・・・・・18

(2)医療機関における動物・・・・・19

(3)補助犬の排泄管理・・・・・20

(4)犬に対する不安(アレルギー/恐怖)のある人への対応・・・・・21

(5)ペットとの見分け方・・・・・22

(6)補助犬以外の役割を持つ犬との区別・・・・・22

(7)海外で育成された補助犬・・・・・23

(8)さまざまな名称で表される犬・・・・・24

(9)合同訓練(共同訓練)中の補助犬候補犬の受け入れ・・・・・24

(10)新型コロナウイルスによる影響・・・・・24

3.補助犬同伴の受け入れについて・・・・・26

3-1.スタッフの教育・・・・・27

3-2.様々な場面における受け入れ・・・・・31

(1)全体に共通すること・・・・・・・・・・ 31

①盲導犬ユーザー・視覚に障害のある人への対応・・・・・32

②介助犬ユーザー・肢体不自由のある人への対応・・・・・34

③聴導犬ユーザー・聴覚に障害のある人への対応・・・・・36

(2)受け入れ区域・・・・・37

(3)待合室 ・・・・・38

(4)土足禁止の場所・・・・・39

(5)診察室・処置時・・・・・39

(6)病室(面会)・・・・・40

(7)透析室 ・・・・・40

(8)補助犬を同伴できない区域・場面・・・・・41

3-3.来院者・面会者への啓発・・・・・43

4.医療機関への受け入れ事例・・・・・45

4-1.受け入れ事例・受け入れに向けた研修・・・・・45

4-2.問題とその対処・・・・・56

4-3.補助犬ユーザーの経験・声・・・・・60

5.補助犬同伴の受け入れ Q&A ・・・・・63

参考資料 ・・・・・65

1.補助犬同伴受け入れを円滑にするためのチェックリスト・・・・・65

2.周知資料 ・・・・・66

3.スタッフの配布資料・・・・・67

4.HP 記載例 ・・・・・69

5.来院者・面会者への周知資料(ポスター)・・・・・70

6.身体障害者補助犬法担当窓口・・・・・71

7.団体リスト ・・・・・74

8.参考・引用文献 ・・・・・74

9.関係法令 ・・・・・ 75

1.理解すべき理念と法令順守(コンプライアンス)の推進


1-1.身体障害者補助犬法


身体障害者補助犬法(以下、補助犬法)は、補助犬ユーザーの自立と社会参加の促進を目的とした法律です。この目的を果たすために、
①補助犬を訓練する訓練事業者には質の高い補助犬の育成
②社会には補助犬を同伴した障害のある人の受け入れ
③補助犬ユーザーには補助犬の衛生・健康・行動の管理が義務付けられています。

②について、不特定かつ多数の人が利用する医療機関も補助犬同伴の受け入れが義務化されています。この3つの義務により、補助犬ユーザーも安心して社会参加でき、社会も安心して補助犬ユーザーを受け入れられるシステムが構築されています(p. 11)。

質の高い補助犬の育成 【イラスト】トレーニングしている犬とトレーナー 訓練事業者 ↔ 健康・衛生・行動管理 【イラスト】介助犬ユーザーと介助犬 補助犬とユーザー ↔ 同伴の受け入れ 【イラスト】補助犬ユーザーの周囲を社会の人が取り巻いている 社会

1-2.障害者差別解消法


障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下、障害者差別解消法)は、障害がある人もない人も、互いに、その人らしさを認め合いながら、ともに生きる社会を作ることを目的とした法律です。この目的を果たすために、国・地方公共団体・事業者に対して、
①「不当な差別的取扱い」の禁止、
②「合理的配慮」の提供を求めています。
①「不当な差別的取り扱い」の禁止国・地方公共団体・事業者が、障害のある人に対して、正当な理由なく、障害のみを理由として差別することを禁止している。例)病院に入ろうとしたら、補助犬の姿を見て利用を拒否された。
②「合理的配慮」の提供国・地方公共団体・事業者に対して、障害のある人から、社会の中にあるバリアを除くために何らかの対応を求められたときに、負担が重すぎない範囲で対応すること(事業者に対しては、対応に努めること)を求めている。例)混んでいる待合室でも安心して待てるように、補助犬ユーザーが利用できる少しゆとりのあるスペースを用意している。
ポイント!補助犬の同伴拒否は単なる「犬」の拒否ではありません。法律に則り、訓練、認定、管理のなされた「補助犬」を理由に施設等の利用を拒否することは、障害のある人の差別にあたる行為です。これは、身体障害者補助犬法に反するとともに、障害者差別解消法によるところの「不当な差別的取り扱い」に該当するものです。

1-3.法令順守(コンプライアンス)を推進する


(1)補助犬ユーザーの受け入れ拒否=法令順守(コンプライアンス)上の問題

公共施設、公共交通機関、店舗、医療機関などの不特定多数の人が利用する施設では、「補助犬を同伴する障害のある人を拒否してはならない」ことが、補助犬法で義務付けられています。受け入れ事業者は法令順守(コンプライアンス)を推進していく上で、補助犬ユーザーの受け入れ拒否をしてはならない」ことを、自らのスタッフはもちろんのこと、施設等を利用する社会の人々に対しても周知することが大切です

(2)補助犬ユーザーの受け入れ=「法令順守(コンプライアンス)」&「共生社会の実現」

補助犬ユーザーの受け入れは「法令順守(コンプライアンス)」のためだけでなく、「共生社会(障害のある人もない人も分け隔てなく暮らしていくことのできる社会)の実現」につながる大切な行動です。「補助犬ユーザーの受け入れは当然である」という意識がスタッフに根付いていることは、スタッフ一人ひとりが「受け入れのために何ができるか」を考えて行動するための大切な素地となります。

(3)来院者・面会者を含めた「受け入れは当然である」という意識の醸成

補助犬法は、「国民」にも補助犬ユーザーに対し必要な協力をするよう求めています。つまり、国民一人ひとりの協力なくして、補助犬同伴拒否という課題は解決できません。補助犬ユーザーの受け入れに対する受け入れ事業者の毅然とした姿勢は、来院者や面会者ひいては社会全体に「補助犬ユーザーの受け入れは当然である」という意識を醸成していくことになるでしょう。

2.補助犬ユーザーと補助犬

「身体障害者補助犬」(以下、補助犬)と生活する人を補助犬ユーザー(補助犬使用者)と呼びます。補助犬とは、盲導犬、介助犬、聴導犬の総称です。補助犬は、身体障害のある補助犬ユーザーの自立と社会参加に資するものとして、補助犬法に基づき訓練・認定された犬です。

【イラスト】盲導犬とユーザー、介助犬とユーザー、聴導犬とユーザー

2-1.補助犬ユーザー


補助犬ユーザーは、視覚に障害のある盲導犬ユーザー、肢体不自由のある介助犬ユーザー、聴覚に障害のある聴導犬ユーザーです。障害の度合いや症状は人それぞれであり、日々の暮らしやコミュニケーション方法は個々に異なります。補助犬ユーザーに共通しているのは、障がいの度合いや症状に関わらず、補助犬ユーザーとしての義務(補助犬の衛生・健康・行動管理)を果たせる者であるということです。つまり、このような義務を果たせない人は、補助犬ユーザーとして認定されないのです。

(1)盲導犬ユーザー・視覚に障害のある人

視覚に障害のある人の見え方は、人それぞれです。全盲の人だけでなく、ある程度、視覚を活用できるロービジョンの人もいます。盲導犬と生活する人も同様であり、全く見えない人だけが、盲導犬と生活しているわけではありません。視覚に障害のある人は、障害福祉サービスの利用等によって日常生活訓練を受けることができます。そのため、単独での歩行や日常生活を続けることが可能です。

(2)介助犬ユーザー・肢体不自由のある人

肢体不自由のある人は、障害が多岐にわたります。車椅子を使用している人だけでなく、杖を使用している人、杖を使用していない人もいます。下肢だけに障害があり、上肢に障害のない人もいれば、上肢にも障害があり手の筋力が弱い人もいます。障害の度合いや症状によって、施設等に求める設備も異なります。

(3)聴導犬ユーザー・聴覚に障害のある人

聴覚に障害のある人には、音が聞こえない・聞こえづらいというだけではなく、音は聞こえていても音が歪んで聞こえる(何を話しているか聞き取れない)という人もいます。また、補聴器や人工内耳の使用により、ある程度音声を聞き取ることができても、雑音が多い場所では聞き取りづらくなる場合もあります。さらに、中途失聴の場合は、話すことに不自由がないこともあります。

2-2.補助犬の役割


【盲導犬】

視覚に障害のある人の安全な歩行をサポートするために訓練を受けた犬です。障害物をよける、曲がり角や段差を知らせるなど、環境の情報を盲導犬ユーザーに伝えます。盲導犬ユーザーはこの情報を手掛かりに進むべき方向を盲導犬に伝え、目的の場所まで移動します。盲導犬の多くは、ラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバー、それらのミックスなどの大型犬です。
【イラスト】のぼり階段を教える盲導犬、犬の足が一段上に上がって知らせている

【介助犬】

手や足等に障害のある人の日常生活動作の一部を介助するよう訓練された犬です。落としたものを拾って渡す、緊急時にスマートフォンを探して持ってくる、ドアの開閉、衣服の着脱、冷蔵庫から飲み物の取り出し、歩行介助、移乗の補助などです。手や足等に障害のある人は、障害が個々に異なるため、介助犬が行う作業もそれぞれ異なります。介助犬は盲導犬と同様に大型犬が主ですが、大型犬ではない介助犬が実働している場合もあります。

【イラスト】携帯電話を渡す介助犬

【聴導犬】

聴覚に障害のある人に必要な音のいくつかを知らせるように訓練を受けた犬です。必要な音は聴導犬ユーザーによって異なります。例えば、室内ではファックスやインターフォン、調理器具の鳴る音、屋外ではクラクションや自転車のベル、名前を呼ぶ声、火災報知器などがあります。また、聴覚に障害のある人は、周りに障害があることを認識してもらいにくいことがありますが、聴導犬の存在により、周りの人に聴覚に障害があることを理解してもらうことができます。それにより緊急時などに他者の支援を受けやすくなるという二次的な効果もあります。聴導犬は小型犬から大型犬まで、様々な大きさ、そして、様々な犬種がいます。

【イラスト】ユーザーの膝にタッチして音を知らせる聴導犬

2-3.補助犬に関わる認定


社会の人々が補助犬を安心して受け入れられるよう、補助犬の安全と安心は多面的に守られています。以下は、補助犬の安全と安心がどのように担保されているかを説明するものです。
ポイント!犬も人も審査・認定されています

【イラスト】介助犬がユーザーに携帯電話を渡している。犬からのふきだし:社会で他人に迷惑をおよぼさない、その他適切な行動をとることができる ユーザーからのふきだし:補助犬の衛生・健康・行動を適切に管理できる 犬とユーザーからのやじるし:認定、補助犬とユーザーの能力が認められて初めて補助犬と補助犬ユーザーとして、補助犬法に基づいて、補助犬を同伴した社会参加が可能となる

【書類の携帯の義務】

補助犬ユーザーは、A. 身体障害者補助犬認定証(盲導犬使用者証)と B.身体障害者補助犬健康管理手帳を所持し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければなりません(p.12,13 参照)。これらは、厚生労働省令で定められた書類であり、補助犬が法律に基づいて訓練・認定され、補助犬が公衆衛生上の危害を生じさせるおそれがない旨を明示するものです。

【表示の義務】

補助犬には、補助犬であることを記す表示を補助犬の胴体に見やすいようにつけなければなりません(p.14 参照)。この表示により、ペットと一目で区別することができます。また、補助犬が何らかの問題を起こした際には、その表示に記載されている補助犬の認定を行った指定法人に連絡することが可能です。

A. 身体障害者補助犬認定証(盲導犬使用者証)

【身体障害者補助犬認定証(写真提供:社会福祉法人日本介助犬協会)】
身体障害者補助犬認定証(○○犬)、ユーザーと犬の写真、使用者名、性別、生年月日、使用者の住所および連絡先、犬の名前、性別、生年月日、犬種、毛色、毛質、狂犬病予防法に基づく登録番号、認定番号、認定年月日、指定法人名、指定法人の代表者名、指定法人の住所及び連絡先、訓練事業者名、訓練事業者の代表者名、訓練事業者の住所及び連絡先

【盲導犬使用者証 (写真提供:公益財団法人日本盲導犬協会)】
盲導犬使用者証、ユーザーと盲導犬の写真、氏名、犬名、登録番号、認定日、ユーザーの氏名・性別・住所・電話番号・生年月日・手帳番号、犬名・性別・犬種・色・生年月日、認定者の事業者名・住所・電話番号

ポイント!
補助犬の同伴を受け入れる際に、書類の提示を求めることは失礼に当たりません。書類を提示できない場合、国が指定した補助犬の法人以外の組織が独自に発行した証明書を提示された場合は、法令上、受け入れの義務はありません。

B. 身体障害者補助犬健康管理手帳

【身体障害者補助犬健康管理手帳】
身体障害者補助犬法第12条第2項で定める書類、補助犬使用年月日、獣医師による健康管理記録、予防接種・健康管理等の記録、犬の名前・性別・犬種・生年月日・狂犬病予防法に基づく登録番号・毛色・毛質・使用者の名前・マイクロチップ番号

C. 補助犬の表示

【1.表示例(介助犬)】
介助犬が着ているケープの背中ポケットに入っている。介助犬、認定番号、認定年月日、犬種、認定を行った指定法人の名称、指定法人の住所及び連絡先(写真提供:日本介助犬協会)

【2.表示例(盲導犬)/ハーネスの形/ハーネスバック】
バーハンドルとU字ハンドルがある。ハーネスバッグには介助犬と同様の表示が書かれている表示が入っている。(写真提供:公益財団法人日本盲導犬協会)

2-4.補助犬の管理


病院で安心して補助犬ユーザーを受け入れる上で、大切なことは犬の健康と衛生状態、さらに行動の管理です。犬は感染症に関する予防・管理方法が確立している動物であり、さらに、適切に訓練され、行動を管理されている犬は、感染症のリスクを高める行動をとることはありません。
「2-3.補助犬に関わる認定」(P.11)の通り、社会参加する上で問題のないことが認められた補助犬と補助犬ユーザーが、認定を受けていますので、安心して補助犬ユーザーを受け入れることが可能です。実際にこれまで多くの補助犬ユーザーが病院を利用しており、補助犬が原因による感染症の発生は報告されていません。

〈犬から感染する可能性のある疾病〉

〇動物から人、人から動物へ感染する疾病を「人獣共通感染症」(ズーノーシス)とよびます。〇世界的には 300 種類を超える感染症があるといわれていますが、そのほとんどは野生動物から感染するものです。〇ウイルス、細菌、寄生虫など、さまざまな感染症の中で、犬から感染する可能性のある代表的なものは、次頁の表のとおりです。〇これらの感染症予防で最も重要なのは、犬の「健康管理」と「衛生管理」、そして感染経路を断つという意味での「行動管理」です。

【表:犬から感染する可能性のある感染症】

病名:狂犬病 病原体:狂犬病ウイルスRabies virus 感染経路:感染動物による咬傷 補助犬の感染対策:犬には法律により、毎年 1 回の狂犬病予防接種が義務付けられています。補助犬も同様です。接種記録は「補助犬健康管理手帳」に記載されており、補助犬ユーザーは手帳の携帯が義務付けられています。

病名:レプトスピラ症 病原体:Leptospira  感染経路:保菌動物(野生げっ歯類)が尿中に排泄する菌に汚染された水あるいは直接尿に触れて、口腔粘膜や皮膚の傷口から侵入して感染 補助犬の感染対策:補助犬はレプトスピラを含む混合ワクチンの接種が推奨されています。接種記録は「補助犬健康管理手帳」に記載されており、補助犬ユーザーは手帳の携帯が義務付けられています。

病名:ワイル病 病原体:L. interrogans、血清型IcterohaemorrhagiaeおよびCopenhageni 感染経路:レプトスピラ症と同じ 補助犬の感染対策:レプトスピラ症と同じ

病名:イヌ型レプトスピラ症 病原体:L. interrogans、血清型 Canicola 感染経路:レプトスピラ症と同じ 補助犬の感染対策:レプトスピラ症と同じ

病名:細菌性腸炎 病原体:Campylobacterjejuni 感染経路:犬の腸内に常在菌として存在。人には病原菌に汚染された生あるいは加熱不十分な食品を介して経口感染する。 補助犬の感染対策:犬は補助犬ユーザーの管理のもと、適切な場所で排泄するようトレーニングされています。便はすぐに回収・処理されます。補助犬ユーザーは補助犬の健康状態を常に管理し、定期的に獣医師による健康診断を受けており、補助犬の体調不良時に補助犬を伴って外出することはありません。
病名:細菌性腸炎 病原体:Yersiniaenterocolitica 感染経路:汚染された飲食物の経口摂取。 補助犬の感染対策:病原体Campylobacterjejuniと同じ

病名:パスツレラ症 病原体:Pasteurellamultocida 感染経路:保菌犬の咬傷、口移しでエサを与える、あるいは飛沫感染。 補助犬の感染対策:公共の場での安全性が認定試験により確認されており、人を咬むようなことはありません。また、補助犬はむやみに人を舐めないよう行動管理されています。

病名:皮膚糸状菌症 病原体:皮膚糸状菌 感染経路:感染動物との直接接触やタオルなどを介した間接感染。補助犬の感染対策:補助犬ユーザーは補助犬のブラッシングを毎日行い、被毛の状態を管理し、定期的に獣医師による健康診断を受けており、補助犬の体調不良時に補助犬を伴って外出することはありません。

病名:イヌ糸状虫症 病原体:イヌ糸状虫Dirofilaria immitis 感染経路:感染幼虫を持つ媒介蚊の吸血。感染犬の血液中のミクロフィラリアが媒介蚊内で感染幼虫にまで発育する。 補助犬の感染対策:補助犬は定期的な予防内服薬の投与をしています。投与記録は「補助犬健康管理手帳」に記載されており、補助犬ユーザーは手帳の携帯が義務付けられています。

病名:エキノコッカス症 病原体:Echinococcusmultilocularis 感染経路:<ヒト>感染犬が糞便とともに排出する虫卵の経口感染。ヒトの体内で包虫を形成する。<イヌ>中間宿主のげっ歯類を経口摂取。 補助犬の感染対策:補助犬は補助犬ユーザーの管理のもと、適切な場所で排泄するようトレーニングされています。便はすぐに回収・処理されます。補助犬ユーザーは補助犬の健康状態を常に管理し、定期的に獣医師による健康診断を受けており、補助犬の体調不良時に補助犬を伴って外出することはありません。

病名:カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症 病原体:Capnocytophagacanimorsus 感染経路:保菌犬による咬傷や過度な接触による感染。 補助犬の感染対策:公共の場での安全性が認定試験により確認されており、人を咬む、人に飛びついて引っ掻くようなことはありません。また、補助犬はむやみに人を舐めないよう行動管理されています。

〇これらの感染症予防のすべてにおいて、補助犬の衛生・健康・行動管理が合致しており、感染症対策が万全に講じられています。

2-5.補助犬と社会のかかわり


(1)補助犬の衛生管理

医療機関で安心して補助犬ユーザーを受け入れる上で、大切なことは犬の健康と衛生状態、さらに行動の管理です。犬は感染症に関する予防・管理方法が確立している動物です。さらに、適切に訓練され、行動を管理されている補助犬は、感染症のリスクを高める行動をとることはありません。

  1. 健康管理 狂犬病予防接種、混合ワクチン接種、外部・内部寄生虫駆除、定期健康診断
    【イラスト】獣医師に診察されている補助犬
  2. 衛生管理 定期的なシャンプー、毎日のブラッシング
    【イラスト】補助犬のブラッシングをするユーザー
  3. 行動管理 咬まない、吠えない、むやみに人や物を舐めない、適切な場所でユーザーの指示により排泄する
    【イラスト】ペットシーツの上で排泄する補助犬

(2)医療機関における動物

医療機関における補助犬やセラピーアニマルの存在が日常的になっている米国では、米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)が、医療機関における動物について、感染管理に関するガイドラインをまとめています。以下は、補助犬の同伴に関わる部分の抜粋です。

■医療施設における環境感染管理のための CDC ガイドライン (監訳 光田年宏)
https://med.saraya.com/gakujutsu/guideline/pdf/kankyocdc.pdf

【動物との接触に関する一般的感染管理法】
A. 動物の唾液、フケ、尿、糞便との接触は最小限に抑えること。B. 動物に触った後は手指衛生を実施すること。
1.石鹸と水で手を洗うこと。特に手が目で見て汚れているか、あるいはタンパク性物質で汚れている場合はそうすること。
2.手が目で見て汚れていないか、あるいは汚染されていない場合は、石鹸と水を使うかあるいは刷り込み式のアルコールベースの手指消毒薬を使用すること。

【介助動物】 (※補助犬に該当する項目)
A. 介助動物として人間以外の霊長類と爬虫類を施設に出入りさせないこと。
B. 1990 年の米国障害者法に従って介助動物の施設への出入りを許可すること。ただしその動物の存在が他の人に対して、直接恐怖を与えたりサービスの質を根本的に変えてしまう場合は除く。
C. 医療施設内の特定の区域への介助動物の出入りに関して決断を迫られる場合は、介助動物、患者、医療行為の状況をケースバイケースで検討し危害を与えるリスクが高いかどうかまた方針や手順の変更が可能でそれによりそのリスクが軽減できるかどうか判断すること。
D. 患者が医療施設に滞在中にその人が自分の介助動物から離れなければならない場合、
1)その患者から離れている間その動物がどのような監督あるいはケアが必要か確認しておく、また、
2)介助動物がいない間その患者が必要なサービスを手配しておくこと。

(3)補助犬の排泄管理

補助犬は、食事や水の量や時間に配慮して管理されており、その上で、補助犬ユーザーが犬の体調を把握して、適切な場所で指示のもとに排泄をするようマナーを身に着けています。外出する際には出かける前に排泄を済ませています。しかし、来院までに時間を要したり、長時間にわたる診察、検査、面会などの場合は、補助犬ユーザーが途中で排泄をさせる場合もあります。排泄の方法は、以下のようにさまざまです。

排泄の方法(例)
①バリアフリートイレやアスファルトの上などの少し広いスペースにトイレシーツを敷いてその上で排泄させる
【イラスト】ペットシーツの上で排泄する補助犬

②ワンツーベルトという道具を用いて、排泄物を地面に落とさずにそのまま袋に回収する
【イラスト】腰にワンツーベルトを巻いて排泄する補助犬

③屋外の土の上など迷惑にならない場所で排泄させる※排泄物は袋で回収する、水で流すなどして補助犬ユーザーが始末します。
【イラスト】芝生で排泄する補助犬

(4)犬に対する不安(アレルギー/恐怖)のある人への対応

補助犬同伴の拒否事例として、「犬アレルギーがある(犬が怖い)来院者がいるかもしれない」といわれることがあります。犬アレルギーの原因はおもにフケと唾液ということが分かっています。そのため、補助犬は、特にフケや唾液のついた毛の飛散が少なくなるように、補助犬ユーザーがこまめに衛生管理をし、周囲に迷惑をかけないように気をつけています。しかしながら、アレルギーのある人にとっては犬が清潔か否かにかかわらず、犬の存在そのものが精神的に負担となることが考えられます。そのため、補助犬ユーザーも、アレルギーがある人への配慮としてアレルギー症状の心配がないように、可能な限り近くの席になることがないようにと考えています。犬アレルギーのある来院者がいた場合、スタッフが、補助犬ユーザーと犬アレルギーがある双方の来院者が可能な範囲で距離をとれるよう配慮をすることで、双方に安心してご利用いただくことができるでしょう。

【イラスト】盲導犬、介助犬、聴導犬 
・施設の設備や物をむやみに舐めたり、咥えたりしないように訓練および管理されているため、唾液が人につく心配はありません。・お薬の投与により、ノミ・ダニが体につかないよう健康管理が徹底されています。・配慮としてマナーコートや大きなケープを着せることもあります。・毎日のブラッシングと定期的なシャンプーを行っており、毛にホコリが溜まっていたり、毛が舞うようなことのないよう管理されています。

犬が怖い人に対しても、対応はアレルギーのある人と同様です。「怖い」という感情は自然に湧いてくるものですし、補助犬ユーザーにとっても心配ですので、可能な範囲で距離をとれるよう配慮することが、双方にとって適切な対応となります。次頁は、犬アレルギーや犬が怖い人などへの声かけの例です。
~犬アレルギーのある人/犬が怖い人がいた場合の声かけ(例)~
補助犬ユーザーに対して「犬アレルギーがある(犬が怖い)とのことでしたので、少しお席を離させていただきました」「犬アレルギーのある(犬が怖い)方からお申し出がありました、お互いに少し距離を取るために、あちらの席にご移動いただいてもよろしいでしょうか」
アレルギーのある(犬が怖い)方に対して「離れたお席(場所)をご案内しますので、安心してご利用ください」「お互いに距離を取るために、あちらの席にご移動いただいてもよろしいでしょうか」

(5)ペットとの見分け方

補助犬と補助犬ユーザーは、一般のペットと飼い主とは異なります。補助犬は、胴体の見やすいところに p. 14 のような表示をつけることが義務付けられています。また、盲導犬は白または黄色のハーネス(胴輪, p.14)をつけていることで、見分けることもできます。

(6)補助犬以外の役割を持つ犬との区別

社会で働く犬の中には、補助犬の他に病院や高齢者施設で働くセラピー犬などもいます。また、海外では、日本の身体障害者補助犬法のもとでは補助犬として認められていない種類の犬(サービスドッグまたはアシスタンスドッグ)が、障害のある人のサポートをしている例があります(精神障害、情緒障害、アレルギー障害など)。しかし、これらはいずれも身体障害者補助犬法における補助犬には含まれず、施設等の利用においては「ペット」と同様に扱われます。しつけが行き届いた犬であっても、法律上は同伴が認められた犬ではないため、補助犬と混同しないよう注意が必要です。

(7)海外で育成された補助犬

日本では、身体障害者補助犬法に基づき認定された補助犬と補助犬ユーザーは施設等の利用が認められています。他方、海外で育成、訓練された補助犬と補助犬ユーザーはこの法律の対象となりません。そのような海外から補助犬を伴って来日した補助犬ユーザーが、日本に滞在する間、安心して過ごすことができるよう、海外の連合会所属の訓練事業者による訓練が行われており、日本の基準と同等と認められる場合は、日本の補助犬の認定団体より「期間限定証明書」が発行されています(下図)。これは海外の補助犬が日本の補助犬と同様の扱いとなるための仮免のような制度です。証明書発行の対象となる補助犬は、盲導犬(Guide Dog)、介助犬(Mobility Service Dog)、聴導犬(Hearing Dog)の 3 種です。前述した身体障害以外の障害をサポートするサービスドッグは、証明書発行の対象となりません。例えば、精神障害をサポートする犬(Psychiatric Service Dog)、エモーショナルサポートドッグ(Emotional Support Dog)、アラート犬(Alert Dog)、セラピー犬(Therapy Dog)などは、日本では施設等の利用において、ペットと同様に扱われます。
【期間限定証明書】海外補助犬使用者 期間限定証明書(表示)〇〇犬 ・使用者氏名 ・犬種 ・輸出国 ・入国/出国予定年月日 ・発行した指定法人 ・育成した法人の名称(実際は英語も併記)

<参考>厚生労働省ポータルサイト(海外からの補助犬ユーザーへの案内)
“Assistance Dogs for Persons with Physical Disabilities” Portal Site
https://www.mhlw.go.jp/english/policy/care-welfare/welfaredisabilities/assistance_dogs/index.html
右側にQRコード
ポイント!海外には、補助犬法のような補助犬とユーザーの認定制度がない国があります。そのような国では、補助犬とユーザーの質が必ずしも保証されているわけではないため、日本への入国に際して、その質を保証するためにも期間限定証明書の発行が大切です。

(8)さまざまな名称で表される犬

アシスタンス・アニマル(Assistance Animal)、アシスタンス・ドッグ(Assistance Dog)、サービス・アニマル(Service Animal)、サービス・ドッグ(Service Dog)、サポート・アニマル(Support Animal)、サポート・ドッグ(Support Dog)、エモーショナル・サポート・アニマル(Emotional Support Animal)、コンフォート・ドッグ(Comfort Dog)。英語では、障害のある人をサポートするための動物を表す複数の単語があります。これらの単語は、国や法律、団体によって使われ方がバラバラです。正しい身体障害者補助犬の知識がないと、それらしい名称を言われると、補助犬だと勘違いして、受け入れてしまうかもしれません。海外からの補助犬ユーザーを受け入れる際は、期間限定証明書の有無で判断すると間違いがないでしょう。

(9)合同訓練(共同訓練)中の補助犬候補犬の受け入れ

合同訓練(共同訓練)とは、認定を受ける前に行う、補助犬を伴って実際に日常生活を送るための訓練です。この段階は、訓練の最終段階であり、補助犬に求められる基礎的な訓練は完了しています。この状態の犬はまだ認定前であるため、正式には補助犬と補助犬ユーザーとしては認められていません。ただし、この時期の訓練は訓練事業者が補助犬ユーザーの指導を行っています。訓練最終段階において医療機関での訓練は、補助犬と同様に受け入れるという柔軟な対応ができると良いでしょう。

(10)新型コロナウイルスによる影響

2019 年に発生した新型コロナウイルス感染症は、補助犬ユーザーの生活にも大きな影響を与えています。犬の新型コロナウイルスへの感染も報告されていますが、その症例は人と比べると極めてわずかです(アメリカ国内での犬への感染数は合計 16 例(2021 年 2 月時点:米農水省, 2021*))。現在の知見では、犬が人への新型コロナウイルスの感染源になるリスクは低いと考えられています(米国疾病予防管理センター, 2021**)。また、新型コロナウイルスが犬から人に感染したという事例はありません。これらの情報をふまえて、以下の点にご配慮願います。
・補助犬ユーザーは、コロナ禍で他者からの声かけやサポートが減っています。コロナ感染予防に配慮しながらの声かけや援助をお願いします。
・感染を心配するあまり、根拠なく補助犬同伴の受け入れを拒まないようお願いします。
・基本の感染対策を行い、他の来院者等と同様に補助犬ユーザーの受け入れをお願いします。
* U.S. Department of Agriculture (2021) Cases of SARS-CoV-2 in Animals in the United States.
https://www.aphis.usda.gov/aphis/ourfocus/animalhealth/sa_one_health/sarscov-2-animals-us
** Centers for Disease Control and Prevention (2021) COVID-19 Frequently Asked Questions Pets and Animals
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/faq.html#Pets-and-Animals

3.補助犬同伴の受け入れについて

「はじめに」に述べたように、補助犬の同伴を受け入れるということは、障害のある人の「権利」を保障することに他なりません。ただ、補助犬ユーザーはむやみに「権利」を主張しているわけではありません。社会で他者に迷惑を及ぼさないよう、補助犬と補助犬ユーザーの両方が審査・認定された上で、身体障害者補助犬法により施設等の利用が認められています。とはいえ、やはり補助犬も「犬」であることに変わりありません。医療機関は、衛生管理が特に求められる施設であるため、補助犬ユーザーをどのように受け入れたら良いのか、不安も大きいと思います。本章では、以下の点について説明します。

  • スタッフの教育
  • 様々な場面における補助犬ユーザーへの対応
  • 他の来院者・面会者への対応

    具体的な対応方法や事例を知ることで、多くの不安は取り除くことができるでしょう。

ポイント!
不安がある場合は、利用を断るという方法を選ぶのではなく、その不安を補助犬ユーザーに伝えて解決策を一緒に考えるようにします。不安を明確にした上で、ユーザーと施設が話し合い、円満に解決策を見いだしたケースも多くあります。

3-1.スタッフの教育


補助犬ユーザーが利用することに対して、何も準備をせずに「全く問題なし!いつでもウェルカム」と自信を持って言えるスタッフはあまりいないかもしれません。特に、補助犬に関してあまり知識がない、補助犬ユーザーの受け入れについて検討したことがない状態では、いくつもの「不安」が頭をよぎるのではないでしょうか。ここまで説明した必要最低限の情報をスタッフ一人ひとりが知ることで、多くの不安を解決できると思います。ここでは、どのスタッフが対応しても補助犬ユーザーを快く迎え入れられるように、必要な体制を整えるための手順を記載しています。体制を構築する際には、参考資料 1(p.65)のチェックリストも合わせてご活用ください。

【担当部門での準備:必要な知識の習得/施設内の準備】


1.補助犬ユーザー受け入れ担当部門(ワーキンググループ)の立ち上げ

  • 総合病院などの大きな組織では、補助犬ユーザーの受け入れに関する担当部門(ワーキンググループ)を立ち上げることで、スムーズに体制を整えることができます。ただし、担当部門の立ち上げは必須ではありません。
  • 担当部門(ワーキンググループ)は、受け入れ体制構築後も、補助犬ユーザーの受け入れに関わる組織内の相談窓口としても機能します。


2.補助犬ユーザーと補助犬の基本情報の把握

  • 補助犬ユーザーの受け入れ準備に先立ち、補助犬ユーザーと補助犬に関する正しい情報を身につけます。<実例>総合病院では、事務局長、副院長、看護師長、感染管理認定看護師、外来看護師長、透析看護師、リハビリテーション科理学療法士など、補助犬ユーザーの受け入れに特に関わる可能性の高い部門の担当者が中心にワーキンググループを立ち上げている例もあります。


3.受け入れ区域の確認

  • 一般の来院者やお見舞いの際に面会者が利用できる場所は、補助犬の同伴を受け入れることが原則です。
  • ただし、一般の来院者や面会者が立ち入りを制限されている区域、ガウンテクニックを要するような区域など、感染及び衛生管理上、やむを得ない理由がある場合に限り、同伴を制限することが認められています。


4.排泄場所の検討

  • 補助犬は外出前に事前に排泄を済ませて来院しますが、来院まで時間を要したり、病院での滞在が長時間になる場合、病院にいる間に補助犬の排泄をさせることがあります。
  • P.20 の例を参考に、病院内での排泄場所を想定しておきましょう。


5.受け入れの詳細の検討

  • 補助犬の管理は補助犬ユーザーが行いますので、病院スタッフが補助犬ユーザーに対して特別に行わなければならないことは基本的にありません。
  • 混雑した院内、補助犬を同伴できない区域に補助犬ユーザーが入る場合など、特別な配慮が必要になることがあります。P.38 以降に検討が必要な場面を例示しています。病院の状況に合わせて、検討を行いましょう。

ポイント!補助犬の同伴を制限する場合は、その理由をユーザーに説明します。


6.スタッフ教育資料の準備

  • 厚生労働省リーフレット「もっと知ってほじょ犬」と「医療機関向け ほじょ犬もっと知って BOOK」(参考資料 2, p.66)は、補助犬や補助犬ユーザー、補助犬法についてまとめてあるハンドブックです。補助犬ユーザーの受け入れをスタッフに周知するために配布して使用することができます。
  • 本ハンドブックは、都道府県・政令指定都市・中核市の身体障害者補助犬法担当窓口(p.71)で配布しています。お近くの担当窓口にご連絡ください。
  • 「スタッフへの配布資料(参考資料 3, p. 67)」は、補助犬ユーザーへの対応方法について、簡単にまとめた資料です。ダウンロードして手直ししてご使用ください。

【スタッフの教育】
7.周知する施設関係者の把握

  • 夜間や休日に、補助犬ユーザーが病院を訪れた際、警備員による受け入れ拒否も報告されています。警備員やボランティアなど、施設に関わる全ての関係者への情報共有も忘れずに行いましょう。

施設関係者の例・病院スタッフ・警備員・駐車場管理スタッフ・併設店舗スタッフ(コンビニ、食堂など)・清掃員・ボランティア など

8.スタッフ教育資料の配布と教育

  • 準備した教育資料をスタッフに配布します。補助犬に関する情報が限られている場合、受け入れを不安に思うスタッフが存在すると考えられます。
  • 特に、「補助犬とペットの違い」や「補助犬ユーザーへの対応」、「他の来院者・面会者への対応」について強調することで、多くの不安を解消することができます。

・動画資料
以下の動画は、医療機関を含むさまざまな施設等への補助犬ユーザーの受け入れの様子をまとめたものです。施設内の研修会や勉強会でご活用ください。動画「まずは受け入れてみませんか?~補助犬使用者の受け入れ方」(事業者用)(日本補助犬情報センター監修・24 時間テレビチャリティー委員会制作著作)

URL:https://www.youtube.com/watch?v=AD8u7d_tszk&feature=youtu.be QR コード

9.勉強会・研修会

  • 補助犬ユーザーの受け入れについて定期的に勉強会を開くことも有効です。
  • 勉強会では、視覚に障害のある人の誘導、車椅子を使用している人の介助方法など、障害のある人に合わせた接遇方法、他の来院者等への周知方法やトラブルへの対応(p.21,32,56)についても取り上げると良いでしょう。
  • 医療機関で行われた補助犬同伴の受け入れ研修の実例は、「4.医療機関への受け入れ事例」(p.45)で紹介しています。補助犬ユーザーを招いたり、専門の機関(p.74)に研修を依頼することができます。

 

3-2.様々な場面における受け入れ


(1)全体に共通すること

補助犬ユーザーは、他の来院者等と同じように「自然に接してもらうことが一番嬉しい」と言うことが多いです。次頁以降に示すように、それぞれの障害のある人に配慮した接し方を心がけた上で、障害の有無にかかわらず、来院者等のニーズをふまえて対応することが、結果として補助犬ユーザーのスムーズな受け入れにつながります。貴施設のホスピタリティ(おもてなし)の精神で接すれば、補助犬ユーザーはもちろんのことすべての来院者に安心して医療機関を利用してもらえるでしょう。
〈補助犬ユーザーへの対応〉

  • 補助犬ユーザーへの接し方は、それぞれの障害のある人への応対姿勢ができていることが基本となります。

〈補助犬への対応〉

  • 補助犬の管理は基本的に補助犬ユーザー自身が行います。そのため、基本的に補助犬に対して求められる特別な対応はありません。
  • ただし、病院側の都合により、補助犬を同伴できない区域がある場合は、一時的に補助犬を事務室などで預かるというケースも考えられます。その場合は、個別に対策を講じる必要があります(p.41)。
  • 補助犬は補助犬ユーザーの指示がとても大切なので、補助犬に対して話しかける、じっと見つめる、触る等の気を引く行動は避けましょう。
  • 補助犬を同伴していても、サポートを必要とする場面があります。もし、お困りの様子を見かけたら、補助犬ユーザーへの積極的な声かけをお願いします。

〈まずは声かけから―「何かお手伝いしましょうか?」〉

  • 補助犬ユーザーや障害のある人に、お困りの様子が見られたら、「何かお手伝いしましょうか」と声かけします。
  • 声かけの際は、同行者や介助者にも配慮しつつ、本人に声をかけ、「どのようにお手伝いすればよろしいですか」と尋ねて、お願いされたことをサポートすることが適切です。

①盲導犬ユーザー・視覚に障害のある人への対応

盲導犬は視覚に障害のある人の安全な歩行をサポートしていますが、目的地までの道のりは盲導犬ユーザーが把握しています。段差や曲がり角、障害物への盲導犬のサポートを手掛かりに、その都度、盲導犬ユーザーが盲導犬に進む方向について指示を出しながら歩行しています。そのため、盲導犬ユーザーが道のりを把握していない場所(新しい場所)では、盲導犬に進むべき方向を伝えることができません。そのため、盲導犬を連れていても、診察室や施設のトイレへの移動など、施設において誘導のサポートを必要とすることもあります。お手伝いが必要かどうかは、ご本人に確認しましょう。

〈コミュニケーション/情報提供〉

  • 文字を読む際には、点字、拡大文字、白黒反転、読み上げなどを使います。
  • 画面を拡大したり、音声で読み上げたりする機能を使ってスマートフォンやパソコンを使いこなしている人もいます。
  • 文字情報を伝える際は、どのような方法による情報提供(共有)が適切か、ご本人に確認すると良いでしょう。
  • モノの位置や方向を説明する際には、時計の文字盤に例えて説明(クロックポジション)すると分かりやすいでしょう。(例:3 時の方向にベンチがあります)

〈視覚に障害のある人の誘導〉
誘導するときは

  • いきなり声をかけずに、まずは自分がだれかを名乗るようにしましょう。 例)「病院スタッフの〇〇ですが、お手伝いしましょうか?」
  • どのように誘導すればよいか確認します。

誘導のポイント

  • 介助者は視覚に障害のある人の半歩前に立つ
  • 肘や肩などにつかまってもらうか、声で誘導する
  • 案内する場合に「あちら、こちら」「もう少し、もうちょっとで」といったあいまいな表現は避け、具体的な言葉で案内する 例)「右に曲がります」「前へ 1 歩進んでください」「昇りの階段です」
  • 狭い場所を通る際は、あらかじめ狭くなることを伝え、視覚に障害のある人が後方に一列に並べるように、肘を後ろに移動させるか、肘から背中につかまる手を移動させる。
    やってはいけないこと
  • 腕を引っ張ったり、背中を押す
  • 盲導犬のハーネスや白杖を引く

【イラスト】盲導犬ユーザーに肘を貸して誘導する様子。盲導犬のハーネスや白杖には触らない。

②介助犬ユーザー・肢体不自由のある人への対応

落としたものを拾う、小さな段差を越えるなど、介助犬が補助できる動作もありますが、人のサポートが必要になる場合もあります。車椅子を利用する介助犬ユーザーの場合、車椅子の援助が必要になる場合もあります。お手伝いが必要であると思われる場面では、何かできることがあるかお声かけすると良いでしょう。
〈肢体不自由のある人の誘導〉

  • 施設内の移動の際は、必要に応じて段差がないところを選びます。車椅子を使用している場合は、エレベーターや車椅子対応エスカレーターのあるルートを案内します。
  • トイレは車椅子専用以外にも、手すりがあり、少し広めの洋式トイレであれば、杖歩行の方や一部の車椅子を使用している人でも利用可能です。オストメイト対応の有無や手すりの位置(写真)など、必要なトイレの設備は人それぞれです。バリアフリートイレの場所や設備(オストメイトの有無)は把握しておき、尋ねられたら案内できるようにしておきましょう。

【写真】バリアフリートイレの写真。オストメイト対応の洗面台や手すりなどがある。

車椅子を使用している人の介助のポイント

  • 急に押さずに声かけをしてから、ゆっくり歩きだす
  • 段差や凸凹のある地面に注意して、ゆっくりめに押す
  • 急な下り坂は後ろ向きで進む
  • 移動時以外はブレーキをかける

小さな段差の移動(登り)

  1. ティッピングレバー(介助者の足元にある、前輪を浮かせる際に踏み込む部分。このレバーのない車椅子もあります)を踏みながら、ハンドルを押し下げて前輪を上げる
  2. その状態で前輪を段差に乗せる
  3. 後ろのタイヤを段差に付けて乗り上げるように車椅子を押す

【イラスト】介助犬ユーザーの車いすを押して段差を乗り越える様子

③聴導犬ユーザー・聴覚に障害のある人への対応

聴導犬はインターフォンや火災報知機などの音を知らせることはできますが、館内放送や人の会話の内容を伝えることはできません。音声のみの案内で、聴覚に障害のある人に情報が伝わっていない可能性がある際は、ご本人に情報を伝えると良いでしょう。

〈聴覚に障害のある人との会話〉
声をかけるときの方法(例)

  • 手話
    手話ができなくても、身振りや数字などを指で表すだけでも、聴覚に障害のある人とのコミュニケーションの助けになります。
  • 筆談・筆談器
  • 口話
    口をはっきりあけてゆっくり話すことで意志の疎通ができる場合もあります。このとき、聴覚に障害のある人は相手の唇の動きを読み取るので、下を向いて話したり、マスクや手で口を覆わないようにします。※感染症などの懸念がある場合はマスク着用の上で、上記の筆談ボードなどを活用しましょう。
  • スマートフォンやタブレット端末などの機器の利用
    スマートフォンやタブレット端末で文字入力したり、UD トーク※などの音声認識ソフトをインストールしている場合は、スマートフォンに向かって話すことで、話した内容が文字になって画面に表示されます。どのような方法で伝えるとよいかは、ご本人に確認しましょう。※コミュニケーションの「UD = ユニバーサルデザイン」を支援するためのアプリ

【イラスト】筆談をしながら、口をはっきり開けて聴導犬ユーザーに話しかけている様子。スマートフォンを利用して、文字で聴覚障害者と話をしている様子。

(2)受け入れ区域

助犬ユーザーの受け入れは、病院も例外ではありません。

〈受け入れ区域の基本原則〉
一般の来院者や面会者が利用できる場所は、補助犬の同伴を受け入れることが原則です。
〈同伴を制限することが妥当とみなされる区域〉

  • 一般の来院者や面会者の立ち入りが制限されている区域、ガウンテクニックを要るような区域などは、補助犬の同伴に制限が設けられることが妥当であるとみなされる区域です。

〈同伴について検討が必要な区域や場面〉

  • レントゲン室等への同伴は、犬の健康管理上、補助犬ユーザーが同伴を希望しない場合があります。
  • 補助犬自身が感染を受ける可能性と補助犬が病原体を区域外に運び出す可能性が考えられる場合も、同伴不可とすることが考えられます。
  • 補助犬ユーザーが診察室などで処置を受ける際に処置に時間がかかるときなど、補助犬ユーザーが補助犬の管理をできなくなる可能性がある場合は、補助犬の同伴が適切か検討する必要があります。予めかかる時間と内容を補助犬ユーザーに伝えることで、補助犬ユーザー自身が補助犬を自宅においてくるなど、適切な判断をすることができます。

〈ポイント!〉
一般の来院者や面会者が利用できるにも関わらず、補助犬の同伴を禁止する場合は、やむを得ない理由を明確に示しましょう。正当な理由なしに補助犬の同伴を拒否することはできません。

(3)待合室

  • 不特定多数の来院者が集まる混雑した待合室では、補助犬ユーザーのための特別な場所を指定しておくかどうかについて検討することも一つの対策として考えられます。
  • 補助犬ユーザーのための優先席を設けることで、犬嫌いやアレルギーの心配のある他の来院者と距離をあけることができます。
  • 別の場所で待機してもらう場合、スタッフが呼びに行く、院内放送で呼ぶなどの方法が考えられます。聴導犬ユーザーには、院内放送の代わりとなる連絡方法を予め決めるなどの配慮が必要でしょう。
  • しかし、あまり厳密に補助犬ユーザーの場所を指定してしまうと、補助犬ユーザーに疎外感や居心地の悪さを与えることにもなります。日頃から混雑した病院で、来院者同士の距離がとても近いなど、必要が求められる場合に限ると良いでしょう。

【イラスト】病院の待合室で他の患者さんと一緒に待つ聴導犬ユーザー。聴導犬は足元で待機している。

 (4)土足禁止の場所

  • 補助犬ユーザーは、靴を脱いで入るような場所では、持参したタオル等で補助犬の足を綺麗にします。汚れた足で床を汚すことはありませんので、ご安心ください。
  • 犬の足拭きにサポートが必要な補助犬ユーザーもいます。「足を拭きましょうか?」というようなお声かけをしていただけると助かります。

(5)診察室・処置時 

  • 補助犬は補助犬ユーザーの足元で大人しく伏せて待機します(p.48)。広いスペースは必要ありません。
  • 診察室内での補助犬の管理も補助犬ユーザーが行います。
  • 処置に時間がかかるなど、補助犬ユーザーが補助犬の管理をできなくなる可能性がある場合は、補助犬ユーザーにお伝えください。補助犬への対応を補助犬ユーザーが予め検討します(p.41)。

【イラスト】診察室で医師の診察を受ける聴導犬ユーザー。聴導犬は足元で待機している。

(6)病室(面会

  • 入院患者の家族や友人が制限なく立ち入ることができる病室であれば、補助犬の同伴を受け入れることが原則です。
  • ただし、同室の患者への十分な配慮が必要となります。「他の来院者や入院患者への配慮(p.44)」に基づき、受け入れの準備を整えます。
  • 他の患者の意志を確認することをせずに、一律に同伴不可とすることは適切ではありません。
  • 同室の患者からの理解が得られない、患者の病状など、同伴を受け入れられないやむを得ない理由がある場合は、補助犬ユーザーにその理由を伝え、デイルームなど他の場所で面会ができるよう代替案を検討します。

(7)透析室

盲導犬ユーザーが透析を受けている場合は少なくありません。透析中、盲導犬はおとなしく待機しています。日頃の衛生・健康・行動管理により、基本的に衛生上の問題になることはありません。盲導犬ユーザーは病院への往復の行程で盲導犬が必要であり、透析に同伴できないとなると通院の行程について介助者を確保するなどの対処が必要となります。

  • 通常の透析場面では、基本的に盲導犬や他の補助犬を同伴することは問題ないと考えられます。
  • 免疫不全症など補助犬と同じ部屋にいるだけでも健康上のリスクがあると想定される患者の緊急透析が必要となった場合には、同伴が困難となる場合もあります。
  • どうしても透析室内に同伴できないと判断される場合は、その理由(ベッドとベッドの間および部屋が狭くて補助犬が横たわっていては透析作業に支障をきたす。緊急に免疫不全患者が透析を行っている、など)を補助犬ユーザーにわかるように説明をします。補助犬ユーザーが指定された特定の場所で透析を受けることについての支障がないならば、なんら問題はないと思われます。
  • 透析室内で補助犬が待機できない場合は、透析室内以外、あるいは室内のどこか離れたリスクがない場所を用意できるか検討し、どのような場所に待機させることができるかを補助犬ユーザーに伝えます(「待機場所の検討」参照(p.42))。
  • 待機場所についてどれくらい補助犬ユーザーがいる場所と離れているか、人通りがある場所かなど、詳しく状況を説明して、確認をとりましょう。
  • 病院側の提案に対して、そこに待機させて透析を受けるか、待機場所として納 得できず自宅に犬を置いて透析室に来るか、同伴者を連れてきて同伴者に犬を見ていてもらうかは、補助犬ユーザーの判断に委ねます。

(8)補助犬を同伴できない区域・場面

補助犬を同伴することができない区域や場面では、補助犬ユーザーが補助犬の扱いを事前に検討する必要があります。

  • やむを得ない理由により同伴が制限される区域については、あらかじめ補助犬ユーザーに説明します。
  • 事前に検査等にかかる所要時間を補助犬ユーザーに伝えます。
  • 犬を待機させる場所があるか、どのような場所かなどを補助犬ユーザーに伝え、区域ごとの対応を予め定めておくことが適切です。

同伴が制限される場合の対処方法には次のようなものがあります。

1)補助犬を同伴者または家族などに預けて同伴可能区域内で待機させる
2)医療機関スタッフが一時的に補助犬を事務室などで預かる
3)隣室などスペースのある場所で一時的に補助犬を待機させる
4)安全の確保された場所で、ソフトケージの中で待機させる
5)補助犬を同伴せずに来院する
【イラスト】同伴者や家族が補助犬とともに廊下で待機する例。ユーザーは一人で検査に向かい、介助犬は同伴者と廊下で待機している。

〈待機場所の検討〉

  • 基本的に、補助犬は補助犬ユーザーの目の届く範囲の距離で邪魔にならない場所があれば、一時的に待機することが可能なように訓練されています。 例)短時間のレントゲン検査を受ける際、隣室の椅子につなぐ(p.50)
  • 目の届く範囲にそのような場所を確保できない場合や長時間の待機が必要になる場合は、待機場所について補助犬ユーザーと相談します。 例)受付の裏や事務所(ソフトケージを補助犬ユーザーから預かり、この中で待機させることもあります(写真))

〈待機場所を選ぶ際のポイント!〉
他の来院者と補助犬の両方の安全を考え、以下のような場所を選びます。

  • 他の来院者などから見えにくい場所(人通りの多くない場所)
  • 施設スタッフの人目が届くところ

【写真】ソフトゲージの中で待機する介助犬。ユーザーは近くのベッドに横になっている。写真提供:社会福祉法人日本介助犬協会

3-3.来院者・面会者への啓発


補助犬ユーザーの受け入れには、医療機関のスタッフはもちろんのこと、他の来院者・面会者の理解も不可欠です。補助犬ユーザーの受け入れについて、複数の場面で周知を図ると、より理解も深まるでしょう。

1.施設への啓発ステッカーの貼付

「補助犬啓発ステッカー」は、補助犬法に基づき補助犬の同伴を積極的に受け入れていることを示すステッカーです。本来、補助犬ユーザーは一般の人が利用できる場所はどこでも利用可能ですが、このようなステッカーがあることで他の来院者・面会者にも補助犬の同伴を周知することにつながります。ステッカーは都道府県・政令指定都市・中核市の身体障害者補助犬法担当窓口(p.71)で入手可能です。

【イラスト】病院の入り口に補助犬啓発ステッカーが貼られている

2.周知資料の活用

  • ハンドブックの配布
    「厚生労働省リーフレット「もっと知ってほじょ犬」」(参考資料2, p.66)は、他の来院者・面会者に補助犬の同伴受け入れについて説明する際に利用できます。口頭で説明するだけではなく、あらかじめ準備した資料をお渡しすることで、大切な情報を漏れなくお伝えすることができます。周知資料を可能な範囲で会計窓口やインフォメーションデスクに常備すると良いでしょう。このハンドブックは都道府県・政令指定都市・中核市の身体障害者補助犬法担当窓口(p.71)で入手可能です。
  • HP での案内
    参考資料 4(病院 HP 記載例, p.69)は、HP で案内しておくと良い内容の例です。貴院の HP の見やすい場所に載せておくと良いでしょう。 <実例>
    補助犬に関する情報は、病院 HP の病院情報のページに掲載されていることが多いです。
  • ポスターの掲示
    法律により病院への補助犬の同伴が認められていること、安心して受け入れることができることについて、他の来院者や面会者にご理解を求めるポスターです(参考資料 5,p.70)。ダウンロードして貴院用に手直しして利用していただくことができます。補助犬ユーザーがいつ来院しても良いように、多くの人の目につく場所に掲示することで、受け入れが当然であるという意識を醸成しておくと良いでしょう。

3.他の来院者や入院患者への配慮


犬が怖い人、犬アレルギーのある人、感染症の不安をかかえる人などに対する配慮は欠かせません。補助犬が衛生的に安全であるという情報提供はもちろんのこと、不安に感じる人がいた場合は、補助犬ユーザーとの席を離す、補助犬の見えない位置をご案内するなどの工夫をすることも大切です。
大部屋の病室への面会などの場合は、同室の入院患者に声をかけ、補助犬の同伴に不安や問題がないか聞き取ります。同室の入院患者の病状など、やむを得ない理由がある場合は、補助犬ユーザーにその理由を伝え、デイルームなど他の場所で面会ができるよう代替案を提案しましょう。

4.医療機関への受け入れ事例

4-1.受け入れ事例・受け入れに向けた研修

 

(1)健診センターにおける取り組み:準備から受け入れまで

公益財団法人筑波メディカルセンター つくば総合健診センター 補助犬ユーザー受け入れに対する取り組み
髙橋 京子
2019 年 10 月、当健診センターで初めて補助犬(盲導犬)ユーザーの健診を受け入れました。受け入れ体制を整え補助犬に関する理解と知識を深める為に取り組んだ内容①受診者に対する受け入れ基準の見直し②日本盲導犬協会の職員による館内視察③全職員向けの補助犬についての勉強会 をご紹介します。まず初めに、当健診センターの受診者に対する受け入れ基準の見直しを行いました。これまで、当健診センターでは視覚障害、聴覚障害のある方などを受け入れてきましたが、補助犬同伴の健診は全く経験したことがありませんでした。身体障害者補助犬法や障害者差別解消法が施行され、認定を受けた補助犬の同伴受け入れが義務化されたこと、また障害があるということだけで正当な理由なくサービスの提供を拒否したり制限したり条件をつける行為が禁止されていることなどを念頭に置き、補助犬と補助犬ユーザー(受診者)が安心してご受診いただけるように健診を受け
入れる際の対応方法を変更しました。次に日本盲導犬協会の職員による館内視察を受け、盲導犬ユーザーへの声かけ・誘導方法などの基本的な案内方法、受診者の健診のながれに沿った盲導犬ユーザーと盲導犬の待機場所、そして他のお客様へのインフォメーション、臨機応変な対応についてご指導をいただきました。最後に職員が補助犬について共通の知識をもち、統一した案内ができることを目的とした全職員向けの勉強会を行いました。日本盲導犬協会による館内視察で指導されたことをベースに、事務職員ほぼ全員が取得しているサービスケアアテンダントの知識を盛りこんだ勉強会を開催しました。補助犬についての基礎知識や検査への誘導方法、他のお客様へのアナウンス方法など、ロールプレーイングを交えながら共通の情報を習得できるよう努めました。受診当日は補助犬と補助犬ユーザー(受診者)の滞在時間は 1 時間程度でしたが、各部署連携してスムーズに案内することができました。お帰りの際、受診者からまず受け入れてくれたこと、そして安心して受診できたことに対して感謝の言葉をいただきました。後日、日本盲導犬協会を通じて再度受診者から感謝の言葉をいただきました。これほど励みになることはありませんでした。受け入れ前に案内方法などの体制を整え全部署で情報を共有できたことで、誤ったイメージを払拭でき、スムーズに案内することができました。受診後は関連部署メンバーによるワーキンググループを発足しました。健診のながれに沿い各検査項目への案内方法や待機場所、館内アナウンスなどを中心に各部署の意見を取り入れながらマニュアルを作成しました。今回の受け入れによってピックアップした課題も協議し、改善しました。これらのマニュアルは、ワーキングメンバーを通して各部署に情報共有しました。引き続き、障がいがある方もない方同様に安心して受診できるよう、受け入れ体制の整備に努めていきたいです。
【写真】つくば総合健診センターでの補助犬の講演会の様子 写真提供:公益財団法人筑波メディカルセンター つくば総合健診センター

〈待機場所の確認(例)〉写真提供:公益財団法人日本盲導犬協会
【写真】待合室で盲導犬ユーザーが座っている様子。盲導犬は足元で待機している。
【写真】検査室の前で盲導犬ユーザーが座っている様子。盲導犬は足元で待機している。
【写真】ベッドに横になって検査を受ける盲導犬ユーザー。盲導犬は足元で待機している。ベッドの脚に盲導犬のリードをつなぐ場合もある。
【写真】座って検査を受ける盲導犬ユーザー。盲導犬は足元で待機している。
【写真】ユーザーから離れた場所で待機する盲導犬。イスの脚にリードをつないでいる。他の部屋で待機する場合や、検査室の外で病院職員のそばで待機する場合もある。
【写真】面談をする盲導犬ユーザー。盲導犬は足元で待機している。

(2)病棟(病室)への受け入れ事例:インタビュー


金沢医科大学病院

介助犬ユーザーの産婦人科病棟への受け入れ

Q. はじめて介助犬の同伴について申し出があったときのことを教えてください。
A. 介助犬ユーザーさんより、娘様のご出産にあたり、介助犬を同伴しての面会や付添をしたいとご希望がありました。病院の幹部会に諮ったところ、最初は全員が賛成というわけではありませんでした。動物を病院(病棟)に入れることに抵抗があるという先生が複数おり、反対する人も多かったことから、協議の結果、無理ではないかということで、一度はお断りしました。その後、再度、介助犬ユーザーさんから、介助犬の日常生活や衛生管理がどのようになされているかについて、資料を用いて説明を受けました。そこで、介助犬を連れて、病室ではなく病院の相談室で面会することにしました。テーブルで病院スタッフと介助犬ユーザーさんが向かい合って会話しましたが、介助犬はテーブルの下に伏せて、会議の間ずっと大人しくしていました。管理も徹底しており、それができないと介助犬として認められないことを理解しました。このことを改めて幹部会で説明しました。それでも難色を示す人もいましたが、問題を突き詰めていくと、「どこを歩いているか分からない動物を入れるのは問題である」という意見がありました。しかし、それは人も同様であるということになりました。また、「抜け毛が落ちる」などの意見もありましたが、きちんと見ながらやりますので、大丈夫でしょうということで、病院として受け入れることになりました。

Q. 最初の幹部会で反対された方はどのくらいいましたか?
A. 幹部の 1/3 ほどは反対していました。

Q. 最初にそれだけの反対があり、また、改めて説明した後でも反対の意見が一部あった中で、「大丈夫でしょう」と後押しすることができた理由はどこにありますか?
A. 介助犬ユーザーさんが実際に病院に来たとき、1 時間ほどの面会でしたが、全く問題がありませんでした。その経験があったため、病棟での面会も問題ないと判断できました。また、産婦人科病棟の医師や看護師も理解を示してくれたので、病棟(病室)への受け入れが可能となりました。

Q. 受け入れにあたり、工夫やワーキンググループの立ち上げなどはしましたか?
A. 受け入れると決まってから、病院の出入り口や廊下に補助犬に関するお知らせを掲示しました。また、病室までのルートや使用するエレベーターの確認をしましたが、その他には特に大それたことはしませんでした。ワーキンググループも作っていません。犬を飼っている方も多く、そのような方は補助犬の同伴に問題がないということも分かっていました。むしろ、きちんとトレーニングを受けており、衛生面も基準をクリアしていることがわかれば、何の抵抗もないでしょうということになりました。

Q. 介助犬ユーザーを受け入れるという幹部会での決定は、全体にどのように周知されましたか?
A. 補助犬同伴の受け入れについて、管理部門から全体に一斉に広報しました。

Q. 介助犬ユーザーへの具体的な対応については、どのように周知しましたか?
A. 個別の対応は特に決めていません。介助犬ユーザーさんには、病院に来る日時をお知らせいただき、その時間に病院スタッフが入り口で出迎えて、病棟まで連れ添って行くということにしました。病棟への受け入れは初めてだったので、このような対応にしました。そうすることで周りにいる患者さんや病院スタッフが、「スタッフ
が引率しているなら安心」と受け止めてもらえると考えました。

Q. 実際に受け入れてみていかがでしたか?
Q. 実際に受け入れてみると、介助犬も大人しくしており、周りの患者さんも気にしていませんでした。もともと盲導犬ユーザーは病院(外来)を利用していたため、患者さんは自然に受け入れていたようです。病棟まで補助犬が入ったことは、今回が初めてでしたが、入院患者さんからのクレームもありませんでした。
Q. 他の病院へのアドバイスがあればお願いします。
A. まずは病院の中でなくても良いので、補助犬を連れて来ていただいて、一度、自分の目で見て、肌で感じてもらえれば、大丈夫であることが分かると思います。補助犬がいないと行動ができないという方もいるので、ぜひとも医療機関に限らず、どこの施設でも補助犬の同伴を受け入れてもらえたらと思います。

(3)病院における職員研修及び普及・啓発イベント

2017 年 11 月 職員向け補助犬ユーザー受入れ研修 所沢明生病院

企画運営:(特非)日本補助犬情報センター 協力:(公社)日本聴導犬推進協会
① 3 種の身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)についての基礎知識
② 「身体障害者補助犬法」「障害者差別解消法」等の法令順守(コンプライアンス)について
③ PR 犬によるデモンストレーション(協力:日本聴導犬推進協会)
④ 医療機関における障害がある方の接遇について
【写真】聴導犬が目覚まし時計の音を教えるデモンストレーションの様子。病院職員が輪になって訓練事業者の職員に質問をしている。

2019 年 12 月 【補助犬啓発イベント】
「ほじょ犬ってなぁに?in 北里大学病院」※ 厚生労働省 2019 年度障害者総合福祉推進事業
企画運営:(特非)日本補助犬情報センター 協力:北里大学病院、(公財)日本盲導犬協会、(社福)日本介助犬協会、(公社)日本聴導犬推進協会 (情報保障・支援/手話通訳・UDトーク)
ア. 病院来訪者、入院患者、病院関係者を対象に、2回/日(午前の部、午後の部)で実施
① 3 種の身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)についての基礎知識
② 各補助犬ユーザーによる補助犬との暮らし、効果や課題などの説明
③ 各補助犬のデモンストレーションによるサポート内容紹介
④ 医療機関における障害当事者の接遇ポイント
イ.イベント実施の効果
館内アナウンスを聞いた来院中の障害当事者が参加し、今後の体験プログラムへの参加などの相談や、簡単な補助犬体験も行った(病院での実施による信頼感から希望者発掘につながった)。病院での開催は、補助犬使用の対象となる者を含め、受入側となる病院内の医療従事者を含む病院関係者、また一般市民などが参加することが可能であったため、補助犬使用への理解の啓発、障害当事者に対する補助犬使用の普及の両面の活動となった。
【写真】病院関係者が集まってイベントに参加している様子。盲導犬ユーザーや介助犬ユーザーが病院関係者に向けて話をしている。聴導犬が目覚まし時計を教えるデモンストレーション。

4-2.問題とその対処


1.補助犬の尻尾や足先が通路にはみ出ている

伏せている補助犬の尻尾や足先が通路にはみ出ていたら、スタッフや来院者・面会者が通路を移動する際に、誤って踏んでしまうかもしれません。そのような場合は、補助犬ユーザーに伝えて補助犬の位置を調整してもらいます。

【イラスト】通路にはみ出している補助犬のしっぽを踏みそうになる人

2.来院者・面会者とのトラブル

補助犬ユーザーの受け入れについて、犬の受け入れに否定的な意見(例:「なぜ犬がいるのか?」「犬を病院にいれてはいけない」)が他の来院者・面会者からあった場合、補助犬同伴の受け入れは義務であること、衛生・健康・行動管理が徹底されており安全な存在であることの説明をします。犬アレルギーや犬嫌いなどの場合は、補助犬ユーザーとの距離を離します。これらの対応を行っても解決せず、受け入れ側と来院者・面会者とのトラブルに発展しそうな場合は、身体障害者補助犬法担当窓口(p.71)に問い合わせることも可能です。第三者からの説明により来院者・面会者が納得する場合もあります。

3.ペットの同伴

補助犬に便乗してペットを同伴した人がいた場合や、補助犬(特に小型犬の聴導犬)を見て、「なぜあの犬は良くて、うちの〇〇ちゃんは病院に入ったらダメなの?」と言われた場合は、補助犬はペットではないこと、補助犬法に則り、認定を受けた補助犬と補助犬ユーザーのみが、施設等の利用を認められていることを伝えます。

4.補助犬(補助犬ユーザー)による迷惑行為

補助犬の同伴について、補助犬法では「身体障害者補助犬の同伴により当該施設に著しい損害が発生し、又は当該施設を利用する者が著しい損害を受けるおそれがある場合その他のやむを得ない理由がある場合は、この限りではない。」としています。万が一、補助犬や補助犬ユーザーに相応しくない行動や様子が見られた場合は、その理由を明確に補助犬ユーザーに伝え、同伴を認められないことを伝えます。例えば、補助犬とされる犬が激しく吠えている、犬から悪臭がする、人に飛びついたり※物を噛むなど、補助犬ユーザーが犬の行動を管理できていないなどがその例です。※聴導犬は音を知らせるために、人の太ももに両手をかける行動をとることがあります。これは補助作業の一部であり、興奮による人への飛びつきではありません。

5.受け入れに関して補助犬ユーザーとの間に意見の相違があったとき

一般の人が利用できる場所では、補助犬の同伴を受け入れることが原則です。ただし、犬アレルギーや犬に恐怖症のある人がいる場合などには、両者への配慮から、配慮が必要な人と補助犬ユーザーの両方(またはそのどちらか)が席を移動する、予約の時間を変更するなど、譲歩しなければならない場面も出てくる可能性があります。この場合、その理由や対応を補助犬ユーザーに伝えます。もし、受け入れ側と補助犬ユーザーの考えに相違があり、お互いに妥協点が見つけられない場合は、身体障害者補助犬法担当窓口の利用も一つの方法として考えられます。

6.排泄・嘔吐等によるトラブルへの対応

急に補助犬の体調が不良となったことなどが原因で、トラブルが起こる可能性はゼロではありません。汚物は、迅速に補助犬ユーザーまたは補助犬ユーザーに依頼された人が片付けます。検体として必要があることも考えられるので、担当者に報告されるまでビニール袋などに入れて保存しておくようにします。補助犬ユーザーが(特に盲導犬ユーザーが)排泄や嘔吐等に気がついていない場合には、注意を促します。汚物の処理は、汚物の処理方法(p.58)をご参照ください。

〈汚物の処理方法〉
尿:拭き取り後、拭き取ったものは廃棄し、汚染部をアルコール消毒後、床などはよく乾燥させます。
便:通常は補助犬ユーザーまたは同伴者が片付けます。不充分であればよく拭き取り、拭き取ったものは廃棄します。汚染部をアルコール消毒(Campylobacter などの常在菌予防)後、床などはよく乾燥させます。

  • 下痢便の場合は、アルコールまたは 0.1%の次亜塩素酸ナトリウム液で消毒し(多量の食中毒起炎菌、ジアルジア栄養型予防)、拭き取った布類は廃棄することを基本とし、80℃以上の洗剤入りの湯で十分洗うか煮沸または高圧滅菌消毒(寄生虫卵感染予防)、または 1%の次亜塩素酸ナトリウム液に 5 分以上浸します(細菌感染予防)。
  • 汚物処理、または消毒時は必ず手袋を着用し、石鹸による手洗い、手指消毒を徹底します。

〈汚物処理後の対応〉

  1. 近くにいたスタッフが補助犬同伴ワーキンググループ(補助犬同伴受け入れに関わる組織, p.27)に報告します。
  2. 補助犬同伴ワーキンググループ担当者は、 ①現場を確認したスタッフから状況と消毒方法の確認を取り、記録します。 ②念のため、院内の感染症管理担当に連絡します。 ③排泄物の性状(下痢便か普通便かなど)、補助犬の健康状態、周囲の状況などを詳細に聞き取りします。
  3. 必要に応じて、補助犬の訓練事業者※、身体障害者補助犬法担当窓口(p.71)に報告します。
    ※補助犬の訓練事業者は、補助犬ユーザーに尋ねます。また、補助犬の認定証(使用者証)(p.12)にも記載があります。

7.医療用器具を補助犬が舐めた場合

通常、補助犬はむやみに人や物を舐めないよう行動管理されています。万が一、補助犬が医療用器具を舐めたら、以下の手順で対処します。

  • 使用後高圧滅菌するような器具であれば、使用済みとして処理します。
  • 点滴台などの大きな器具は、汚染部をアルコール消毒あるいは 3%クレゾールで消毒し、十分乾燥させます。
  • スタッフは十分石鹸で手洗いをし、手指消毒します。補助犬ユーザーが器具を舐めたことに気がついていない場合、舐めたことを説明して注意を促します。
4-3.補助犬ユーザーの経験・声

事例1 ~混雑する病院で~
とても混んでいる総合病院を受診する際、その病院では個室を用意してくれます。自分の診察の番になると、医師がその個室まで来て診察してくれます。とても混んでいる病院という事で、このような配慮を病院が提案してくれました。

事例2 ~救急搬送されたとき~
体調不良により救急搬送された際、救急隊員の方は、盲導犬を救急車に同乗させられることを理解しており、スムーズに搬送してもらいました。病院につくと、点滴を受ける私が寝るベッドの足に盲導犬をつなぎ、待機させてくれました。その後、事務所に職員さんが盲導犬を連れて行き、そちらで待たせてくれました。その間、職員さんは、盲導犬に排泄させてくれたり、水を与えてくれたりとお世話になりました。また、病院から盲導犬の訓練事業者※に連絡をしてくれたため、夕方には訓練事業者の職員が、盲導犬を預かりに来てくれました。※補助犬ユーザーが携帯している認定証(使用者証)には、訓練事業者が記されています。また、補助犬がつけているハーネスやケープには、補助犬の表示があり、ここには補助犬を認定した指定法人が記されています。さらに、ハーネスバックには、緊急連絡先などを記載したメモを入れている補助犬ユーザーもいます。

事例3 ~歯科医院にて~
私が利用している歯科医院は治療室が狭く盲導犬を待機させられる場所はありません。その代わりに、歯科医の配慮で、盲導犬を待合室に待機させて治療を受ける際は、待合室に一番近い治療台で治療してくださっています。

事例4 ~子ども病院にて~
子ども専門の病院に何年も通っていましたが、盲導犬を同伴して行こうと思い連絡すると、「外来の子どもが怖がってしまう」「アレルギーの子どもがいる」と看護師長の判断で断られてしまいました。しかし、結局、アレルギーの専門医が、アレルギーは大丈夫だと説明してくれたために、受け入れていただけることになりました。※日本国内の複数の病院(子ども病院を含む)では、専門的に訓練を受けた犬が常勤して、動物介在療法を提供しています。病院に常勤する犬は、衛生・健康・行動管理が徹底されることで、安全が担保されています。補助犬も同様です。p.21 に示す通り、犬が苦手な人、アレルギーのある人にも配慮して、安心・安全に補助犬を同伴する方を受け入れていただくことが可能です。

事例5 ~入院中の義父をお見舞いしたとき~
数年前、総合病院に盲導犬同伴の許可を得て、入院中の義父の見舞いに数回通いました。ある時、盲導犬を実家に預けて病室に行ったところ、看護師さんから「遠慮しないで盲導犬と一緒に来てください」と言われて嬉しかったです。

事例6 ~初めて行く病院を利用したとき~
補助犬を始めて受け入れる病院だったため、最初に問い合わせた際は、「しばらく日にちが欲しい」とのことでした。その 2 日後に、説明を聞いてもらえるということで、訓練事業者の訓練士と病院に行ったところ、職員さんのうち 70 名が説明に参加してくれました。説明をした後、職員さんから、「補助犬をどこで待たせたらよいか」ということを聞いてくれました。私からは、診察するときも補助犬を同伴したいことをお願いしました。また、他の来院者にも補助犬の同伴について、伝えてほしいことをお願いしました。それから 13 年間何事もなく、過ごすことができています。

事例7 ~迅速に対応してくれた~
母が総合病院に入院した時、初日は各担当部署に補助犬の同伴について確認をするため待たされましたが、その日のうちに病院で会議が行われ、補助犬の同伴について認めていただきました。対応の早さが嬉しかったです。私自身は受付に盲導犬を同伴すると伝えただけでしたが、当日担当になった看護師さんが、各部署に手配をしてくれたようです。※病院の利用は緊急なこともあるため、迅速な対応はすばらしいことです。このようなことを想定して、事前に受け入れ体制を構築しておくことが好ましいでしょう。

事例8 ~健診センターにて1~
検診センターを利用した際、補助犬を同伴して健診を受けることが出来ました。その中で、マンモグラフィは放射線をあびることを避けるため、スタッフの方がスタッフ用の待機部屋を提案してくれました。スタッフの方と話し合いながら、良い場所を探していきました。「ここはどうですか?」と提案してくれるなど、一緒に相談しながら進められてよかったです。犬の個性で向いている待ち方(場所)があるため、このような合理的配慮は素晴らしいです。

事例9 ~健診センターにて2~
私は健康診断を受ける際、補助犬を待合室のようなところで待機させています。健診の際は、健康センターのスタッフの方々が、誘導をしてくださいます。その際、盲導犬が伏せている側に「盲導犬のためいたずら禁止」のような張り紙もしてくださいました。

事例10 ~主人が救急搬送されたとき~
以前に主人が救急で運ばれた時は、救急救命室までは入れなかったため、待合室の椅子で待たせたり、救急受付の警備員室で預かってもらう形で待たせたりしました。

事例11 ~状況に合わせて~
一回限りの訪問か、家族のお見舞いで頻繁に来るか、また、補助犬ユーザーや病院によって状況が異なります。そのため、両者の話し合いで良い方法を見つけることが必要だと思います。お互いが譲歩する気持ちも大切だと思います。

事例12 ~接骨院の予約で~
最寄りの接骨院では、盲導犬同伴でも私が気を遣わなくて済むようにと、午前の最後の時間に予約を入れてくれたり、盲導犬のために敷物を用意してくれたりします。

事例13 ~骨折時のリハビリテーションで~
全盲の私は左足の骨折で整形外科病院に入院しました。手術後、右松葉杖で室内は歩けるようになりました。しかし左手で白杖を使いながら歩くことは怖くてできませんでした。病院もそんな私のことを心配して、盲導犬と廊下や階段で歩く練習をすることを許可してくれました。幸いハーネスは左手持ちのため、右松葉杖でも簡単に歩けるようになりました。また作業療法士が同行して、路上での歩行やバスの乗り降りの練習にも付き合ってくれました。お陰で盲導犬と歩けるようになってから退院することができました。

5.補助犬同伴の受け入れ Q&A

Q. うちのクリニックは土足禁止なのだけれど、補助犬の足は汚いのでは?
A. 補助犬ユーザーは、靴を脱いで入るような場所では、持参したタオル等で補助犬の足を綺麗にします。汚れた足で床を汚すことはありませんので、ご安心ください。また、犬の足拭きにサポートが必要な補助犬ユーザーもいます。「足を拭きましょうか?」というようなお声かけをしていただけると助かります。

Q.犬が苦手なスタッフがいるのだが、受け入れを断ることは可能か?
A. ただ断るということは適切ではありません。補助犬ユーザーは補助犬の行動を管理しています。補助犬が咬む、飛びつく、吠えかかるというようなことはありませんので、一般の犬のように不安を抱えなくても大丈夫であることを知っていただくと良いでしょう。どうしても苦手な場合は、応対を他のスタッフに変わってもらうなど検討してみましょう。

Q. 補助犬の表示をつけていない犬が来たが、受け入れなければならないか?
A. 受け入れる必要はありません。補助犬の表示は補助犬法で義務付けられています。表示の確認や認定証(使用者証)の提示に応じてもらえない場合は、法令上、受け入れの義務はありません。ペットを補助犬と偽っている可能性も否定できません。

Q. 以前、補助犬が来たときに毛が落ちていたため、今後は補助犬を受け入れなくても良いか?
A. 受け入れを断ることはできません。補助犬ユーザーは毎日のブラッシングや場合によってはマナーコート(洋服)の着用により、抜け毛をできる限り防いでいます。もし、少し毛が残っている場合は、粘着テープなどでの清掃にご協力をお願いします。ただし、補助犬が待機していた場所が毛で真っ白(真っ黒)になっているという異常な抜け毛を見つけた場合は、その場で指摘することが適切です。

Q. 補助犬を抱っこするなどして、補助犬の表示が見えない場合はどうしたらよいか?
A. まずは、足元におろして待機させるよう促し、表示や書類の提示を求めて正式な補助犬であることを確認しましょう。補助犬であることの確認をすることは失礼にあたりません。また、ペットを補助犬と偽っているなど、疑義がある場合も、書類の提示を求めるようにしましょう。書類の提示がない場合、受け入れる必要はありません。

参考資料

1.補助犬同伴受け入れを円滑にするためのチェックリスト

補助犬ユーザーと補助犬に関する知識の習得
□ 法令順守(コンプライアンス):補助犬法と障害者差別解消法
□ 補助犬と生活する補助犬ユーザー
□ 補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)の役割
□ 補助犬の安全性(衛生・健康・行動)
□ 補助犬とペットの違い
□ 障害に合わせた接遇
施設内のバリアフリーと設備
□ 施設内のバリア(段差や障害物など)の把握
□ 施設のスペース(通路の幅など)や設備の把握
□ 補助犬の排泄場所の検討(総合病院の場合)
スタッフ教育
□ 補助犬ユーザーと補助犬に関する基本情報の案内(教育資料の配布)
□ 補助犬ユーザー、障害のある人の接遇に関する教育
□ 他の来院者・面会者への対応
他の来院者・面会者への啓発
□ 補助犬啓発ステッカーの貼付
□ 補助犬の同伴に関するポスター貼付
□ 病院 HP への記載
□ 周知資料の準備(厚生労働省リーフレット「もっと知ってほじょ犬」)

2.周知資料

(1)スタッフ向け (厚生労働省リーフレット「医療機関向け ほじょ犬もっと知って BOOK」)
(2)来院者・面会者向け (厚生労働省リーフレット「もっと知ってほじょ犬」)
どちらもポケットサイズのハンドブックです。都道府県・政令指定都市・中核市の身体障害者補助犬法担当窓口(p.71)で入手可能です。また、以下の URL・QR コードより、データをダウンロードすることができます。
厚生労働省ホームページ:ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 福祉・介護 > 障害者福祉 > 身体障害者補助犬 > 5広報物等
・スタッフ向け
URL: https://www.mhlw.go.jp/content/000537940.pdf
QR コード
・来院者・面会者向け
URL: https://www.mhlw.go.jp/content/000636237.pdf
QR コード

3.スタッフへの配布資料

ダウンロード資料 https://www.jssdr.net/pdf/staff-medical.docx QRコード
〇〇病院スタッフ各位 〇〇病院補助犬同伴ワーキンググループ
補助犬を同伴する来院者・面会者への対応について
本院では身体障害者補助犬法、ならびに、障害者差別解消法に則り、法律に従い訓練・認定された補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)の同伴を受け入れています。補助犬は衛生・健康・行動管理の徹底された犬であり、病院でも安全かつ安心して受け入れることが可能です。本院でも一般の来院者や面会者が利用できる場所は、補助犬を同伴する来院者や面会者が利用することになりますので、ご理解・ご協力のほど、よろしくお願いいたします。
ただし、一般の来院者や面会者が立ち入りを制限されている区域、ガウンテクニックを要するような区域など、感染及び衛生管理上、やむを得ない理由がある場合に限り、同伴を制限することが認められます。各施設について、補助犬の同伴が認められないやむを得ない理由がある場合は、補助犬同伴ワーキンググループまでお問合せください。
・補助犬ユーザーへの対応
補助犬ユーザーへの対応は、それぞれの障害のある人への応対姿勢に配慮して、他の来院者・面会者と同じ対応をします。お困りの様子やお手伝いが必要な様子がない場合は、特にお声かけする必要はありません。補助犬の管理は補助犬ユーザー自身が行います。病院で犬が適切にふるまえるよう管理するのも補助犬ユーザーの義務です。そのため、基本的に補助犬に対して求められる特別な対応はありません。
・他の来院者・面会者への対応
補助犬の存在について質問を受けた場合、「補助犬法により病院への同伴が認められていること」、「行動と衛生上の管理がなされており安全であること」をお伝えください。必要に応じて配布用ハンドブックをお渡しください。補助犬の存在に不安を感じる方には、補助犬ユーザーとの距離を取った席を案内するなど、ご対応をお願いいたします。
・補助犬に関するトラブル・その他の質問
その他、補助犬ユーザーの受け入れについてご質問がございましたら、補助犬同伴ワーキンググループまでお問い合わせください。
問い合わせ:補助犬同伴ワーキンググループ(内線:〇〇〇〇)

4.HP 記載例

ダウンロード資料 https://www.jssdr.net/pdf/user-medical.docx QRコード
身体障害者補助犬の同伴受け入れについて
〇〇病院では、「身体障害者補助犬法」に基づき訓練・認定された補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)の同伴を受け入れています。補助犬を同伴しての受け入れは、障害のある方をはじめ、誰もが等しく病院を利用し、安心した医療を受けることができるための対応です。
1.補助犬法に基づく補助犬

【イラスト】盲導犬ユーザー、介助犬ユーザー、聴導犬ユーザー

盲導犬…視覚に障害のある方の歩行誘導をするために訓練を受けた犬
介助犬…手足等に障害のある方の日常生活動作を介助するよう訓練を受けた犬
聴導犬…聴覚に著しい障害がある方の耳の代わりとなり、インターフォンや名前を呼ぶ声、警報器などを報せるように訓練を受けた犬
補助犬は、衛生・健康・行動管理における配慮のなされた犬であり、安心して受け入れていただけます。なお、補助犬以外の動物(ペットを含む)を同伴してのご来院はお断りしております。

2.院内で補助犬をみかけたら
補助犬は補助犬ユーザー(補助犬を同伴する障がいのある方)の管理のもと、補助犬ユーザーにとって必要な補助作業を行っています。触ったり、声をかけたり気を引いたりせず、温かく見守ってくださいますようお願いいたします。その他、ご心配な点や補助犬に関してお気づきのことがございましたら、病院スタッフまでお声かけください。

5.来院者・面会者への周知資料(ポスター)

ダウンロード資料https://www.jssdr.net/pdf/user-boardmedical.docx QRコード
法律により補助犬を同伴しての来院が認められています

【イラスト】盲導犬ユーザー、介助犬ユーザー、聴導犬ユーザー

誰もが安心して利用できる病院づくりのために皆様のご協力をよろしくお願い申し上げます

  • 身体障害者補助犬(以下、補助犬)は、身体障害のある方を補助するために法律に基づいて、訓練および認定された犬です。
  • 衛生・健康・行動管理における配慮のなされた犬であり、安心して受け入れていただけます。
  • 当院でも、感染および衛生管理上、同伴を制限している区域以外は、補助犬を同伴しての受診、検査、面会等を受け入れております。
  • 院内で補助犬を見かけても、触ったり声をかけたり気を引いたりせず、そっと見守っていただきますようお願い申し上げます。
  • ご不安なことやご質問がございましたら、病院スタッフにお申し出くださいませ。

※ペットの同伴はお断りしております。補助犬はペットではありません。〇△□病院院長

6.身体障害者補助犬法担当窓口

都道府県身体障害者補助犬法担当窓口一覧 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 令和3年4月1日現在
都道府県 担当課名 担当係名 電話番号
北海道 障がい者保健福祉課 社会参加係 011-204-5278
青森県 障害福祉課 社会参加推進グループ 017-734-9309
岩手県 障がい保健福祉課 障がい福祉担当 197-629-5448
宮城県 障害福祉課 地域生活支援班 022-211-2541
秋田県 障害福祉課 地域生活支援班 018-860-1332
山形県 障がい福祉課 障がい者活躍・賃金向上推進室 023-630-3303
福島県 障がい福祉課 共生社会担当 024-521-7170
茨城県 障害福祉課 自立支援グループ 029-301-3363
栃木県 障害福祉課 社会参加促進担当 028-623-3053
群馬県 障害政策課 地域政策支援係 027-226-2638
埼玉県 障害者福祉推進課 社会参加推進・芸術文化担当 048-830-3309
千葉県 障害者福祉推進課 障害保健福祉推進班 043-223-2340
東京都 計画課 社会参加推進担当 03-5320-4147
神奈川県 障害福祉課 社会参加推進グループ 045-210-1111
新潟県 障害福祉課 地域生活支援係 025-280-5212
富山県 障害福祉課 地域生活支援係 076-444-3213
石川県 障害保健福祉課 地域生活支援グループ 076-225-1426
福井県 障がい福祉課 共生社会グループ 0776-20-0338
山梨県 障害福祉課 地域生活支援担当 055-223-1461
長野県 障がい者支援課 在宅支援係 026-235-7104
岐阜県 障害福祉課 社会参加推進係 058-272-8309
静岡県 障害福祉課 身体障害福祉班 054-221-2366
愛知県 障害福祉課 社会参加推進グループ 052-954-6697
三重県 障がい福祉課 社会参加班 059-224-2274
滋賀県 障害福祉課 社会活動係 077-528-3542
京都府 障害者支援課 スポーツ・文化芸術等社会活動推進係 075-414-4599
大阪府 障がい福祉室自立支援課 社会参加支援グループ 06-6941-0351
兵庫県 ユニバーサル推進課 社会参加支援班 078-341-7711
奈良県 障害福祉課 社会参加促進係 0742-27-8922
和歌山県 障害福祉課 在宅福祉班 073-441-2533
鳥取県 障がい福祉課 社会参加推進室情報アクセス担当 0857-26-7201
島根県 障がい福祉課 療育・相談支援グループ 0852-22-6527
岡山県 障害福祉課 福祉推進班 086-226-7362
広島県 障害者支援課 自立・就労グループ 082-513-3155
山口県 障害者支援課 社会参加推進班 083-933-2765
徳島県 障がい福祉課 社会参加・啓発担当 088-621-2238
香川県 障害福祉課 地域生活支援グループ 087-832-3292
愛媛県 障がい福祉課 在宅福祉係 089-912-2423
高知県 障害福祉課 地域生活支援担当 088-823-9634
福岡県 障がい福祉課 社会参加係 092-643-3264
佐賀県 障害福祉課 地域生活支援担当 0952-25-7064
長崎県 障害福祉課 地域福祉班 095-895-2453
熊本県 障がい者支援課 社会参加班 096-333-2235
大分県 障害者社会参加推進室 地域生活支援・芸術文化スポーツ推進班 097-506-2725
宮崎県 障がい福祉課 社会参加推進・管理担当 0985-32-4468
鹿児島県 障害者支援室 地域生活支援係 099-286-2746
沖縄県 障害福祉課 地域生活支援班 098-866-2190

政令指定都市身体障害者補助犬法担当窓口
一覧
政令指定都市 担当課名 担当係名 電話番号
札幌市 障がい福祉課 事業管理係 011-211-2936
仙台市 障害企画課 社会参加係 022-214-8151
さいたま市 障害支援課 地域生活支援係 048-829-1308
千葉市 障害者自立支援課 企画班 043-245-5175
横浜市 障害自立支援課 福祉給付係 045-671-3891
川崎市 障害者社会参加・就労支援課 社会参加支援担当 044-200-2928
相模原市 高齢・障害者福祉課 障害福祉班 042-707-7055
新潟市 障がい福祉課 在宅福祉係 025-226-1239
静岡市 障害福祉企画課 企画管理係 054-221-1197
浜松市 障害保健福祉課 総務調整グループ 053-457-2630
名古屋市 障害企画課 福祉係 052-972-2587
京都市 障害保健福祉推進室 社会参加推進担当 075-222-4161
大阪市 障がい福祉課 06-6208-8071
堺市 障害施策推進課 社会参加係 072-228-7818
神戸市 障害福祉課 調整係 078-322-6579
岡山市 障害福祉課 福祉係 086-803-1236
広島市 障害福祉課 082-504-2147
北九州市 障害福祉企画課 社会参加推進担当 093-582-2453
福岡市 障がい者支援課 差別解消・交流係 092-711-4985
熊本市 障がい保健福祉課 企画調整班 096-328-2519

中核市身体障害者補助犬法担当窓口一覧
中核市 担当課名 担当係名 電話番号
函館市 障がい保健福祉課 社会参加・事業担当 0138-21-3263
旭川市 障害福祉課 障害事業係 0166-25-6476
青森市 障がい者支援課 相談チーム 017-734-5319
八戸市 障がい福祉課 障がい福祉グループ 0178-43-9106
盛岡市 障がい福祉課 相談認定係 019-651-4111
秋田市 障がい福祉課 医療給付担当 018-888-5663
山形市 障がい福祉課 障がい福祉第一係 023-641-1212
福島市 障がい福祉課 障がい庶務係 024-525-3748
郡山市 障がい福祉課 管理係 024-924-2381
いわき市 障がい福祉課 支援係 0246-22-7485
水戸市 障害福祉課 認定係 029-350-8084
宇都宮市 障がい福祉課 福祉サービスグループ 028-632-2363
前橋市 障害福祉課 福祉サービス係 027-220-5711
高崎市 障害福祉課 給付担当 027-321-1245
川越市 障害福祉課 福祉サービス担当 049-224-5785
川口市 障害福祉課 支援第1・第2係 048-259-7926
越谷市 障害福祉課 048-963-9164
船橋市 障害福祉課 相談支援係 047-436-2309
柏市 障害福祉課 事業調整担当 04-7167-1136
八王子市 障害者福祉課 042-620-7479
横須賀市 障害福祉課 046-822-9398
富山市 障害福祉課 障害福祉係 076-443-2056
金沢市 障害福祉課 企画庶務係 076-220-2289
福井市 障がい福祉課 企画係 0776-20-5435
甲府市 障がい福祉課 相談支援係 055-237-5339
長野市 障害福祉課 企画管理担当 026-224-5030
松本市 障害福祉課 障害福祉担当 0263-34-3212
岐阜市 障がい福祉課 指導係 058-214-2136
豊橋市 障害福祉課 0532-51-2354
岡崎市 障がい福祉課 障がい1係 0564-23-6867
一宮市 障害福祉課 障害福祉グループ 0586-85-7698
豊田市 障がい福祉課 総務担当 0565-34-6751
大津市 障害福祉課 管理係 077-528-2745
豊中市 障害福祉課 企画係 06-6858-2266
吹田市 障がい福祉室 給付担当 06-6384-1347
高槻市 福祉相談支援課 072-674-7171
枚方市 地域健康福祉室 障害福祉担当総務・事業グループ 072ー841ー1457
八尾市 障がい福祉課 障がい福祉係 072-924-3838
寝屋川市 障害福祉課 総務係 072-838-0382
東大阪市 障害施策推進課 06-4309-3183
姫路市 障害福祉課 給付担当079-221-2305
尼崎市 障害福祉課 障害者福祉担当06-6489-6397
明石市 障害福祉課 障害者施策担当078-918-5142
西宮市 生活支援課 0798-35-3157
奈良市 障がい福祉課 在宅支援係 0742-34-4593
和歌山市 障害者支援課 073-435-1060
鳥取市 障がい福祉課 障がい者福祉係 0857-30-8217
松江市 障がい者福祉課 障がい者政策係 0852-55-5304
倉敷市 障がい福祉課 086-426-3305
呉市 障害福祉課 給付グループ 0823-25-3135
福山市 障がい福祉課 企画管理担当 084-928-1062
下関市 障害者支援課 給付係 083-231-1917
高松市 障がい福祉課 生活支援係 087-839-2333
松山市 障がい福祉課 社会参加担当 089-948-6353
高知市 障がい福祉課 地域生活支援室 088-823-9378
久留米市 障害者福祉課 障害施策推進チーム 0942-30-9035
長崎市 障害福祉課 総務企画係 095-829-1141
佐世保市 障がい福祉課庶務係0956-24-1111
大分市 障害福祉課 097-537-5786
宮崎市 障がい福祉課 生活支援係 0985-25-2111
鹿児島市 障害福祉課 障害福祉係 099-216-1273
那覇市 障がい福祉課 企画・庶務グループ 098-862-3275

厚生労働省ホームページ:ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 福祉・介護 > 障害者福祉 > 身体障害者補助犬 > 1身体障害者補助犬情報
URL: https://www.mhlw.go.jp/content/000784800.pdf

7.団体リスト

特定非営利活動法人日本補助犬情報センター https://www.jsdrc.jp/
認定特定非営利活動法人全国盲導犬施設連合会 〒162-0065東京都新宿区住吉町5−1吉村ビル
http://www.gd-rengokai.jp/ 03-5367-9770
一般社団法人日本身体障害者補助犬学会 〒669-1535 兵庫県三田市南が丘 2 丁目 6-12 株式会社スイッチオンサービス内 http://www.jssdr.net/ 079-555-6117

8.参考・引用文献

  • 身体障害者補助犬受け入れ等相談対応マニュアル 特定非営利活動法人日本介助犬アカデミー(現・日本補助犬情報センター)
  • 身体障害者補助犬同伴受け入れマニュアル<医療機関編> 特定非営利活動法人日本介助犬アカデミー(現・日本補助犬情報センター)

9.関係法令

身体障害者補助犬法の概要(平成14年5月29日法律第49号)
〇施行日:平成14年10月1日 〇一部改正:平成19年12月5日 

  • 法の目的と定義(第一章)

【目的】

良質な補助犬の育成、補助犬使用者の施設利用の円滑化をもって、身体障害者の自立及び社会参加の促進に寄与する
【定義】

  • 盲導犬:道交法で定める盲導犬
  • 介助犬:肢体不自由のある方のためにものの拾い上げ及び運搬等の肢体不自由を補う補助を行う犬
  • 聴導犬:聴覚障害のある方にブザー音等を聞き分け、使用者に必要な情報を伝え、必要に応じ音源への誘導を行う犬
  • 訓練事業者の義務等(第二章)
  • 良質な補助犬の育成(適性のある犬の選択、獣医師等との連携確保、使用者に必要な補助の的確な把握)
  • 育成した補助犬の使用状況の調査、必要に応じた再訓練

→補助犬の訓練に関し必要な事項は省令で定める

  • 施行規則
  • 盲導犬の訓練基準(第一条)
  • 基礎訓練、歩行誘導訓練、合同訓練の実施 ・歩行誘導訓練は、使用予定者の評価に基づき策定された訓練計画により行うとともに、訓練犬との適合性の評価を早期に実施 ・専門的な知識を有する者等との連携の確保・協力 ・使用者からの定期的な報告と再訓練等の実施
  • 介助犬の訓練基準(第二条)
  • 基礎訓練、介助動作訓練、合同訓練の実施 ・介助動作訓練は、使用予定者の評価に基づき策定された訓練計画により行うとともに、訓練犬との適合性の評価を早期に実施 ・(その他、盲導犬と同様の規定)
  • 聴導犬の訓練基準(第三条)
  • 基礎訓練、聴導動作訓練、合同訓練の実施 ・聴導動作訓練は、使用予定者の評価に基づき策定された訓練計画により行うとともに、訓練犬との適合性の評価を早期に実施 ・(その他、盲導犬と同様の規定)
  • 使用者の義務等(第三章、第六章)
  • 身体障害者補助犬の行動の適切な管理 ・訓練を受けて認定された補助犬である旨の表示 ・獣医師の指導を受け、犬に愛情を持って接する ・衛生の確保(予防接種等)

【参考】身体障碍者福祉法(報告の徴収等) ・都道府県知事(指定都市市長、中核市市長)は、必要があると認める時は、報告を求め、施設への立ち入り検査ができる。事業者が法律等に違反したときなどに事業の制限・停止を命ずることができる。

  • 施設の円滑な利用(第四章)
  • 国等、公共交通事業者等、不特定かつ多数の者が利用する施設において補助犬を同伴するのを拒んではならない ・法令で定める規模の民間企業における就業者が補助犬を同伴するのを拒んではならない(施行日:平成20年10月1日) ・民間住宅で補助犬を同伴するのを拒まないよう努めなければならない ※施設等を利用するものが著しい損害を受けるおそれがある場合、その他のやむを得ない理由がある場合は、この限りでない
  • 補助犬の認定(第五章)※盲導犬については、当分の間適用されない。
  • 定法人:厚生労働大臣が指定する補助犬の認定事務を行う法人(省令で定めるところにより、補助犬の種類ごとに補助犬の訓練または研究を目的とする一般社団、一般財団、社会福祉法人を指定)。身体障害者が同伴して他人に迷惑を及ぼさない等、適切な行動をとる能力があることの認定。認定した補助犬が能力を欠くこととなった場合の認定取り消し。 
  • 指・厚生労働大臣の行う指定法人に対する改善命令、指定の取り消し、報告の徴収等を規定→その他、指定法人、補助犬の認定に関し、必要な事項は省令で定める
  • 施行規則
  • 指定の基準(第七条)
  • 補助犬の種類ごと(介助犬、聴導犬に限る)に基準に適合している者。適正な法人運営、業務が適正に実施されている。必要な経理的な基礎を有していること。認定業務が不公平になるおそれがないこと。必要な知識経験等を有する者により構成された審査委員会を設置。苦情解決のための体制の整備。※別途、法人を指定する省令を定めている。
  • 認定の申請手続き・方法等(第八、九、十条)
  • 補助犬の認定を受けようとする者は申請書を指定法人に提出。訓練の記録、訓練計画、訓練を行ったもの及び専門的な知識を有する者による訓練の総合的評価。育成犬との適合状況に関する障害者の意見。
  • 指定法人は認定を行うにあたり、書面による審査、実地の検証、実地の確認を実施。実地の検証、確認は審査委員会で実施。実地の検証、確認は障害者を同伴し、屋内や不特定多数の者が利用する施設等において実施。
  • 指定法人は認定を行った補助犬の健康状態や基本動作・介助動作等の状況を障害者から定期的に報告を求める。
  • 厚生労働大臣への報告等(第九、十一、十二条)
  • 指定法人は補助犬の認定を行ったとき、認定を取り消したときは厚生労働大臣に報告。
  • 指定法人は毎事業年度の事業計画書、収支予算書、事業報告書、収支決算書等を厚生労働大臣に提出。
  • 苦情相談窓口について(第七章)
  • 障害者または施設の管理者は、補助犬の同伴または使用に関する苦情の申し立てをすることが出来る。
  • 都道府県、指定都市、中核市における苦情窓口の設置(施行日:平成20年4月1日)
  • 補助犬法施行規則の施行通知(平成14年10月1日障害保健福祉部長通知)
  • 補助犬の訓練については、省令に定める訓練基準に基づき行うとともに、以下についても指針として活用されるべきことを通知。盲導犬訓練基準(日盲社協盲導犬委員会策定、平成4年)※以降改定を加えている。介助犬訓練基準(「介助犬の訓練基準に関する検討会(厚労省)策定:平成14年」)。聴導犬訓練基準(「聴導犬の訓練基準に関する検討会(厚労省)策定:平成14年」)。 ・認定を行う法人の指定は、身体障害者更生援護施設を経営する社会福祉法人について適用されることが想定される。 ・介助犬、聴導犬の認定については、省令に基づき行うとともに、以下についても指針として活用されるべきことを通知。介助犬の認定要領。聴導犬の認定要領。「介助犬及び聴導犬の認定基準等に関する検討会」(厚労省策定:平成14年)。
    (参考)盲導犬関連法等

  • 道路交通法(昭和35年6月25日法律第105号)
  • (目が見えない者、幼児、高齢者等の保護)目が見えない者は道路を通行するときは、政令で定めるつえを携え、政令で定める盲導犬を連れていなければならない。
  • 道路交通法施行令 (目が見えない者等の保護)
  • 盲導犬は、盲導犬の訓練を目的とする一般社団、一般財団、社会福祉法人で国家公安委員会が指定したものが、盲導犬として必要な訓練をした犬、必要な訓練を受けていると認めた犬とする。
  • 指定手続き、必要な事項は国家公安委員会規則で定める。
  • 盲導犬の訓練を目的とする法人の指定に関する規則(指定の基準等)
  • 盲導犬として必要な訓練をする業務、認定する業務の実施に関し適切な計画が定められていること。
  • 訓練業務等を行う施設が、訓練士等として必要な知識、技能を有する者がおかれ、必要な設備を備えていること。
  • 必要な経理的基礎を有すること。
  • 訓練業務が不公平になるおそれがないこと。 (国家公安委員会への報告等
  • 指定法人は・指定法人は毎事業年度の事業計画書、収支予算書、事業報告書、収支決算書等を国家公安委員会に提出。
  • 国家公安委員会は必要があると認めたときは報告・資料の徴収を求めることができる。 (解任の勧告等)
  • 国家公安委員会が行う指定法人に対する役員等の解任勧告、改善の勧告、指定の取り消し等を規定。
    【参考】盲導犬訓練基準等の策定・改訂の経緯 〇平成4年「盲導犬訓練施設設置運営基準」「盲導犬歩行指導計画基準」「盲導犬歩行指導員等養成基準」の3基準を策定。
  • 平成10年 上記基準に「盲導犬訓練基準」「盲導犬訓練施設管理準則」の2基準を追加策定。
  • 平成29年 5基準を3計画に改変・改訂「盲導犬訓練計画」「盲導犬歩行指導計画」「盲導犬歩行指導員養成計画」 
    ※訓練3計画のほかに「盲導犬認定計画」も策定されている。
    ※上記の基準・計画は11の盲導犬育成施設が合意し、日盲社協盲導犬委員会で策定され、国家公安委員会に提出。
  • 盲導犬訓練計画(盲導犬育成基準) 
  • 適正犬について身体・性質・動作・健康と管理の面から基準を規定
  • 適正犬の供給・確保について、適任者の指導のもとに計画的に供給できるよう努めることを規定
  • 盲導犬の訓練の内容を事項ごとに規定。

①基礎訓練②歩道③道路の横断④障害物⑤横断歩道 等。また、訓練記録の保管、訓練時間、評価・指導も規定。

  • 盲導犬歩行指導計画(共同訓練基準)
  • 盲導犬を利用しようとする障害者(訓練生)への指導の計画・内容を規定。
  • ①訓練生の要件②入所選考③更生援護の計画④歩行訓練⑤盲導犬歩行指導カリキュラム⑥フォローアップ⑦盲導犬の引退時期⑧記録
  • 盲導犬歩行指導員等養成計画(訓練士資格基準)
  • 盲導犬歩行指導員や盲導犬訓練士の研修プログラムを規定
  • 盲導犬認定計画
  • 認定の申請手続き、方法等について規定

※この手引きは、厚生労働科学研究「身体障害者補助犬の質の確保と受け入れを促進するための研究」(2019 年度~2020 年度 課題番号:19-GC2-001)の成果物としてまとめたものです。
※この手引きは、クリエイティブ・コモンズ(CC BY-NC-ND 表示-非営利-改変禁止 )ライセンスの下でライセンスされています。
https://creativecommons.jp/licenses/ イラスト:NPO 法人 MAMIE

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