【イラスト】飲食店で食事を楽しむ家族。介助犬ユーザーの母親の足元には介助犬が待機している。
身体障害者補助犬(以下、補助犬)は、障害のある人の生活に大きな役割を果たしています。補助犬との生活が始まったら、もっと積極的に外出できる!ずっと行きたかったあのお店に行ってみよう!…補助犬は、補助犬と暮らす障害のある人(以下、補助犬ユーザー)の生活に彩りを添える存在です。「外食」は、そのお店の味を堪能することはもちろん、他者との交流の場として、人々の生活を豊かにするひとときです。その意味で、飲食店もまた、生活に彩りを添える大切な場として、補助犬ユーザーはもちろんのこと、すべての人に開かれた場であることが望まれます。一方で、補助犬ユーザーを受け入れる飲食店は、「他の利用客の反応が心配」「補助犬の衛生面は?」「補助犬ユーザーへの対応が分からない」など、多くの不安を抱えているかもしれません。本ガイドブックは、飲食店での様々な場面を想定した対応例や実例をふまえて、補助犬ユーザーはもちろんのこと、飲食店の他の利用客、さらには、飲食店のスタッフなど、『すべての人が安心して補助犬の同伴を受け入れられる社会の創造』を掲げて作成しました。誰もが安心して飲食を楽しめるお店づくりに向けて、本ガイドブックを役立てていただければ幸いです。
はじめに ・・・・・1
1.笑顔広がる飲食店・・・・・ 4
2.他の利用客の反応・・・・・ 7
3.基本情報 ・・・・・ 9
3-1.身体障害者補助犬法・・・・・ 9
3-2.障害者差別解消法・・・・・ 10
3-3.法令順守(コンプライアンス)を推進する・・・・・ 11
4.補助犬ユーザーと補助犬・・・・・・・・・・12
4-1.補助犬ユーザー・・・・・・・・・・ 12
(1)盲導犬ユーザー・視覚に障害のある人・・・・・ 13
(2)介助犬ユーザー・肢体不自由のある人・・・・・ 13
(3)聴導犬ユーザー・聴覚に障害のある人・・・・・ 13
4-2.補助犬の役割・・・・・・・・・・ 14
4-3.補助犬に関わる認定・・・・・・・・・・ 15
4-4.補助犬と社会のかかわり・・・・・ 19
(1)補助犬の衛生管理・・・・・・・・・・ 19
(2)犬に対する不安(アレルギー/恐怖)のある人への対応・・・・・ 20
(3)ペットとの見分け方・・・・・・・・・・ 21
(4)補助犬以外の役割を持つ犬との区別・・・・・21
(5)海外で育成された補助犬・・・・・ 22
(6)さまざまな名称で表される犬・・・・・ 23
(7)合同訓練(共同訓練)中の補助犬候補犬の受け入れ・・・・・ 23
(8)新型コロナウイルスによる影響・・・・・ 23
5.飲食店への補助犬ユーザーの受け入れ・・・・・ 25
5-1.不安1:他の利用客の反応が心配・・・・・ 26
5-2.不安2:店内が狭くてスペースがない・・・・・ 30
5-3.不安3:犬は汚いのでは?アレルギーが心配・・・・・ 34
5-4.不安4:対応が分からない・・・・・ 35
5-5.様々な場面における受け入れ・・・・・ 36
(1)全体に共通すること・・・・・ 36
①盲導犬ユーザー・視覚に障害のある人への対応・・・・・ 37
②介助犬ユーザー・肢体不自由のある人への対応・・・・・ 40
③聴導犬ユーザー・聴覚に障害のある人への対応・・・・・ 42
(2)予約を受ける際の対応・・・・・ 43
(3)予約時に補助犬の同伴について申し出がなかった場合・・・・・ 44
(4)座敷席を利用したとき・・・・・ 44
(5)ビュッフェの利用時・・・・・ 44
(6)問題とその対処・・・・・ 45
6.スタッフの教育 ・・・・・47
7.利用客への啓発 ・・・・・49
8.補助犬同伴の受け入れ Q&A ・・・・・51
おわりに ・・・・・53
参考資料 ・・・・・54
1.補助犬同伴受け入れを円滑にするためのチェックリスト・・・・・ 54
2.スタッフの教育資料・・・・・55
3.利用客への周知資料(厚生労働省リーフレット「もっと知ってほじょ犬」)・・・・・ 56
4.利用客への周知資料(ポスター)・・・・・57
5.身体障害者補助犬法担当窓口・・・・・ 58
6.団体リスト ・・・・・61
7.参考・引用文献 ・・・・・61
8.関係法令 ・・・・・62
盲導犬ユーザーが店員に入店を断られ、入り口で立ちすくんでいる。すると、お店の中から子どもの声が…「僕、盲導犬知ってるよ。盲導犬はお店に入っていいんだよ。」小学校で盲導犬の役割を勉強した子どもが、そう説明した。店員は、それならば…と、盲導犬ユーザーの入店を受け入れる。しばらく経ってから、他のお客さんが入店する。そして、一言。「盲導犬いいこにしてるじゃん。ご主人、この店、繁盛するよ!」
これは、実際の出来事です。後から入ってきた利用客は、補助犬ユーザーが受け入れ拒否をよく経験していることを知っていたのでしょう。補助犬を受け入れているお店の姿勢を評価する声かけをしたものと思われます。きっと補助犬の入店を説明した子どもは得意満面の笑顔だったでしょう。このお寿司屋さんでの微笑ましい雰囲気が想像できます。補助犬ユーザーは、まだ多くの飲食店で受入れ拒否を経験しています。しかし、補助犬を受け入れてみた飲食店では、素敵な笑顔が広がっています。以下は、飲食店等を利用した補助犬ユーザーの体験談です。快く迎え入れてくれた飲食店の存在は、補助犬ユーザーの生活に彩りを添えていることがわかります。補助犬ユーザーに限らず、社会には何らかの障害のある人は 7.6%いるといわれています(平成 30 年度, 厚生労働省)。また、高齢者は人口の 28.7%を占めます(総務省統計局, 2020)。飲食店が、生活に彩りを与える存在として、さらに多くの人を笑顔にすることができるようになることは、とてもすばらしいことです。
「個人飲食店は断られるケースが多く、ハードルが高いため、利用することを諦めてしまうことが多いのですが、最近、近所にある個人店に友だちと立ち寄ってみたら、『受け入れは初めてだけど、全然良いよ』と迎え入れてくれました。お食事を終えて帰るときは、『また来てね』と言ってくれました。そのような声かけはもちろん、なにより近所に盲導犬をウェルカムしてくれる個人店ができたことが嬉しかったです。身構えずに入ることが出来るチェーン店を選びがちな自分がいて、(食べたいものでお店を選ぶという)本来の形ではないことにモヤモヤしていたのですが、個人店で受け入れてもらえて『また来てね』と言ってもらえたことは本当に嬉しかったです。」
「地元のお店やクリニックなどには、『お手伝いが必要な時は遠慮なく声をかけてくださいね』と言ってもらえます。例えば、そのお店を利用しない日でも、バス停にいると、バスが行ったばかりなのか、何分後にくるかなど、時刻表や接近情報などを見てくれます。見守っていただいていることを、とても嬉しく思います。」
「昨年だったと思いますが、地方の居酒屋さんに行きました。はじめてのお店だったので、予約の時点で盲導犬がいることを伝えておきました。当日、お店に伺うと、盲導犬用のスペースが確保され、ふわふわな毛布まで用意してくださっていました。純粋に嬉しく、有り難く、とても心地よく食事を楽しむことができました。チェーン店でしたので、後日、本社にもお礼の連絡をさせてもらいました。これは特別なケースかもしれませんが、こんな風に盲導犬ウェルカムなお店が増えるといいなぁと感じます。」
「私は耳が聞こえないのでわからないのですが、(聴導犬を見て)不思議そうな顔をしているお客様がいたら、(スタッフの方が)軽く説明してくださったり、補助犬がいるのが当然のような振る舞いをしてくださると、助かるなと思っています。『特に良かった』と意識して気づく事柄ではないですが、『普通に過ごせた』という経験のほうがベストです。」
「盲導犬と生活を始める少し前に行くようになった居酒屋がありました。盲導犬の生活が始まってから、盲導犬と一緒に受け入れてもらえるか心配しながら、その居酒屋に連絡したら、『もちろん大丈夫ですよ』と喜んで受け入れてくれました。その後も、お店にいくたびに声をかけてくれます。私が普段から盲導犬の衛生面に配慮していることを見てくれていたようで、『遠慮なく座敷席も利用して良いよ』と言ってくれました。1 頭目の盲導犬が引退する時には、その居酒屋で友人がお別れ会を催してくれ、お店の方が犬も食べられる食品でケーキを作ってくれました。客と店員という関係を越えて、親密な関係を築けています。2 頭目の盲導犬と一緒に今も通っています。」
「私はインターネットでおいしそうなお店を調べて行くことがよくあるのですが、お店までの道順や目印を聞くついでに盲導犬同伴についても連絡するようにしています。そうするとだいたいのお店でご了解をいただけます。とはいっても、なかには初めはどこか盲導犬の受け入れに不安そうな雰囲気のあるお店もあります。しかし、盲導犬がとても行儀良く、おとなしくしているのを見て、帰る頃には『また来てねー♪』と店員さん皆で見送ってくださった所もありました。よく行く喫茶店や居酒屋さんなどでは、盲導犬も含めて、特別扱いをするわけでもなく、ある程度放っておいてくれるので、かえってそれが心地よく過ごさせてもらえています。」
「カウンター席のみの狭いラーメン屋さんを利用した時、『わんちゃんも入れるように』と、椅子を調整してくれました。カウンターの半分を私と犬が使っているような状況になっても、『いいよ、いいよ』と快く受け入れてくれました。回転率がなんぼのラーメン屋さんで申し訳なくて、『急いで食べて出ますんで』というと、『いいよ、ゆっくり食べてね』と言ってくれました。お店の売り上げや忙しさもあったはずなのに、受け入れてくださり、『また来てね』と言ってくれました。帰る際は、一番混まない時間帯をお聞きして、その後はその時間帯に利用するようにしています。ラーメンは私の大好物ですが、ラーメン屋さんはなかなか受け入れてもらえることができないので、とても嬉しかったです。」
飲食店を含む多くの業種で、補助犬の同伴を受け入れる際に、最も心配することとして、「他の利用客の反応」があげられています。
「すべてのお客様に喜んでいただくこと」を大切にする飲食店にとって、自然に生じる不安かもしれません。
実際のところ、補助犬の同伴により、他の利用客はどのような反応を示すのでしょうか?令和元年度に行われた厚生労働省の調査研究報告書によると、
補助犬を受け入れた経験のある施設のうち、他の利用者からの苦情はほとんどありませんでした(他の利用者からの苦情なし:ショッピングセンター98%、ホテル 100%、飲食店 93%)。
他の利用者から苦情があったのは、ショッピングセンター41 施設中 1 施設、ホテル 102 施設中 0 施設、飲食店 15 店舗中 1 店舗でした。
飲食店は、調査対象店舗のうち、補助犬を受け入れた経験のあるお店が 15 店舗のみで、うち 1 店舗で一般の利用者から苦情を受けた経験がありました。
その内容としては、「健常者が、障害者に付き添っているのに、なぜ盲導犬が一緒にいるのか。」という内容でした。
補助犬の同伴に懸念を示す人は、わずかであることがわかります。
また、上記のような苦情があった場合は、補助犬の役割をお伝えすることで、補助犬の存在を理解していただけるでしょう。
本ガイドブックでは、他の利用客にも安心して補助犬を受け入れてもらえるよう、大切なポイントを紹介しています。
ポイントをおさえて対応することで、すべての利用客に快適に笑顔で飲食を楽しんでいただけることでしょう。
【円グラフ】ショッピングセンター
(苦情を受けたことが)ない:83%
ホテル(苦情を受けたことが)ない:77%
飲食店(苦情を受けたことが)ない:93%
補足:苦情のほとんどは、補助犬の問題ではなく従業員の理解不足による対応の不備によるもの。
他の利用者から苦情を受けた経験のある施設は、ショッピングセンターで 1 例(41 施設中)、飲食店で 1 施設(15 施設中)のみ。
(身体障害者補助犬の普及・啓発のあり方に関する調査研究報告書, 2020)
ここからは、補助犬同伴での受け入れを社会で整え、補助犬ユーザーの社会参加を促進するための、法的枠組みを説明します。
法的な視点で補助犬ユーザーの受け入れを考えると、どうしても難しく感じてしまうかもしれません。
まずは、飲食店の持前のホスピタリティ(おもてなし)の心により、「お客様に喜んでいただく」ために何ができるか?という視点で、
補助犬ユーザーの受け入れを考えていただくようお願いします。思いのほか受け入れへのハードルが下げられるのではないかと思います。
これ以降の情報を参考に、補助犬ユーザーを始めとして、さまざまなニーズのある人がお店でのご飲食を、笑顔で楽しんでいただける工夫をしてくださいますと幸いです。
【イラスト】聴導犬を抱きしめているユーザーの周りに、高齢者、妊婦、見えない人、子ども、外国人
誰もがその人らしい生活を送ることのできる社会をめざして
身体障害者補助犬法(以下、補助犬法)は、補助犬ユーザーの自立と社会参加の促進を目的とした法律です。この目的を果たすために、
①補助犬を訓練する訓練事業者には質の高い補助犬の育成
②社会には補助犬を同伴した障害のある人の受け入れ
③補助犬ユーザーには補助犬の衛生・健康・行動の管理が義務付けられています。
②について、不特定多数の者が利用する飲食店も補助犬同伴の受け入れが義務化されています。
この3つの義務により、補助犬ユーザーも安心して社会参加でき、社会も安心して補助犬ユーザーを受け入れられるシステムが構築されています(p. 15)。
質の高い補助犬の育成
【イラスト】トレーニングしている犬とトレーナー 訓練事業者 ↔ 健康・衛生・行動管理
【イラスト】介助犬ユーザーと介助犬 補助犬とユーザー ↔ 同伴の受け入れ
【イラスト】補助犬ユーザーの周囲を社会の人が取り巻いている 社会
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下、障害者差別解消法)は、障害がある人もない人も、互いに、その人らしさを認め合いながら、
ともに生きる社会を作ることを目的とした法律です。この目的を果たすために、国・地方公共団体・事業者に対して、
①「不当な差別的取扱い」の禁止、②「合理的配慮」の提供を求めています。
①「不当な差別的取り扱い」の禁止
国・地方公共団体・事業者が、障害のある人に対して、正当な理由なく、障害のみを理由として差別することを禁止している。
例)お店に入ろうとしたら、補助犬の姿を見て入店を拒否された。
②「合理的配慮」の提供
国・地方公共団体・事業者に対して、障害のある人から、社会の中にあるバリアを除くために何らかの対応を求められたときに、負担が重すぎない範囲で対応すること
(事業者に対しては、対応に努めること)を求めている。
例)補助犬同伴での食事の予約があったとき、可能な範囲で足元の広い席を案内している。
〈ポイント!〉
補助犬の同伴拒否は単なる「犬」の拒否ではありません。法律に則り、訓練、認定、管理のなされた「補助犬」を理由に施設等の利用を拒否することは、障害のある人の差別にあたる行為です。これは、身体障害者補助犬法に反するとともに、障害者差別解消法によるところの「不当な差別的取り扱い」に該当するものです。
(1)補助犬ユーザーの受け入れ拒否=法令順守(コンプライアンス)上の問題 公共施設、公共交通機関、店舗などの不特定多数の人が利用する施設では、「補助犬を同伴する障害のある人を拒否してはならない」ことが、補助犬法で義務付けられています。受け入れ事業者は法令順守(コンプライアンス)を推進していく上で、「補助犬ユーザーの受け入れ拒否をしてはならない」ことを、自らのスタッフはもちろんのこと、お店を利用する社会の人々に対しても周知することが大切です。
(2)補助犬ユーザーの受け入れ =「法令順守(コンプライアンス)」&「共生社会の実現」補助犬ユーザーの受け入れは「法令順守(コンプライアンス)」のためだけでなく、「共生社会(障害のある人もない人も分け隔てなく暮らしていくことのできる社会)の実現」につながる大切な行動です。「補助犬ユーザーの受け入れは当然である」という意識がスタッフに根付いていることは、スタッフ一人ひとりが「受け入れのために何ができるか」を考えて行動するための大切な素地となります。
(3)利用客を含めた「受け入れは当然である」という意識の醸成 補助犬法は、「国民」にも補助犬ユーザーに対し必要な協力をするよう求めています。つまり、国民一人ひとりの協力なくして、補助犬同伴拒否という課題は解決できません。補助犬ユーザーの受け入れに対する受け入れ事業者の毅然とした姿勢は、利用客ひいては社会全体に「補助犬ユーザーの受け入れは当然である」という意識を醸成していくことになるでしょう。
「身体障害者補助犬」(以下、補助犬)と生活する人を補助犬ユーザー(補助犬使用者)と呼びます。補助犬とは、盲導犬、介助犬、聴導犬の総称です。補助犬は、身体障害のある補助犬ユーザーの自立と社会参加に資するものとして、補助犬法に基づき訓練・認定された犬です。
【イラスト】盲導犬とユーザー、介助犬とユーザー、聴導犬とユーザー
補助犬ユーザーは、視覚に障害のある盲導犬ユーザー、肢体不自由のある介助犬ユーザー、聴覚に障害のある聴導犬ユーザーです。障害の度合いや症状は人それぞれであり、日々の暮らしやコミュニケーション方法は個々に異なります。補助犬ユーザーに共通しているのは、障がいの度合いや症状に関わらず、補助犬ユーザーとしての義務(補助犬の衛生・健康・行動管理)を果たせる者であるということです。つまり、このような義務を果たせない人は、補助犬ユーザーとして認定されないのです。
(1)盲導犬ユーザー・視覚に障害のある人
視覚に障害のある人の見え方は、人それぞれです。全盲の人だけでなく、ある程度、視覚を活用できるロービジョンの人もいます。盲導犬と生活する人も同様であり、全く見えない人だけが、盲導犬と生活しているわけではありません。視覚に障害のある人は、障害福祉サービスの利用等によって日常生活訓練を受けることができます。そのため、単独での歩行や日常生活を続けることが可能です。
(2)介助犬ユーザー・肢体不自由のある人
肢体不自由のある人は、障害が多岐にわたります。車椅子を使用している人だけでなく、杖を使用している人、杖を使用していない人もいます。下肢だけに障害があり、上肢に障害のない人もいれば、上肢にも障害があり手の筋力が弱い人もいます。障害の度合いや症状によって、施設等に求める設備も異なります。
(3)聴導犬ユーザー・聴覚に障害のある人
聴覚に障害のある人には、音が聞こえない・聞こえづらいというだけではなく、音は聞こえていても音が歪んで聞こえる(何を話しているか聞き取れない)という人もいます。また、補聴器や人工内耳の使用により、ある程度音声を聞き取ることができても、雑音が多い場所では聞き取りづらくなる場合もあります。さらに、中途失聴の場合は、話すことに不自由がないこともあります。
【盲導犬】
視覚に障害のある人の安全な歩行をサポートするために訓練を受けた犬です。障害物をよける、曲がり角や段差を知らせるなど、環境の情報を盲導犬ユーザーに伝えます。盲導犬ユーザーはこの情報を手掛かりに進むべき方向を盲導犬に伝え、目的の場所まで移動します。盲導犬の多くは、ラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバー、それらのミックスなどの大型犬です。
【イラスト】のぼり階段を教える盲導犬、犬の足が一段上に上がって知らせている
【介助犬】
手や足等に障害のある人の日常生活動作の一部を介助するよう訓練された犬です。落としたものを拾って渡す、緊急時にスマートフォンを探して持ってくる、ドアの開閉、衣服の着脱、冷蔵庫から飲み物の取り出し、歩行介助、移乗の補助などです。手や足等に障害のある人は、障害が個々に異なるため、介助犬が行う作業もそれぞれ異なります。介助犬は盲導犬と同様に大型犬が主ですが、大型犬ではない介助犬が実働している場合もあります。
【イラスト】携帯電話を渡す介助犬
【聴導犬】
聴覚に障害のある人に必要な音のいくつかを知らせるように訓練を受けた犬です。必要な音は聴導犬ユーザーによって異なります。例えば、室内ではファックスやインターフォン、調理器具の鳴る音、屋外ではクラクションや自転車のベル、名前を呼ぶ声、火災報知器などがあります。また、聴覚に障害のある人は、周りに障害があることを認識してもらいにくいことがありますが、聴導犬の存在により、周りの人に聴覚に障害があることを理解してもらうことができます。それにより緊急時などに他者の支援を受けやすくなるという二次的な効果もあります。聴導犬は小型犬から大型犬まで、様々な大きさ、そして、様々な犬種がいます。
【イラスト】ユーザーの膝にタッチして音を知らせる聴導犬
社会の人々が補助犬を安心して受け入れられるよう、補助犬の安全と安心は多面的に守られています。以下は、補助犬の安全と安心がどのように担保されているかを説明するものです。
ポイント!犬も人も審査・認定されています
【イラスト】介助犬がユーザーに携帯電話を渡している。犬からのふきだし:社会で他人に迷惑をおよぼさない、その他適切な行動をとることができる ユーザーからのふきだし:補助犬の衛生・健康・行動を適切に管理できる 犬とユーザーからのやじるし:認定、補助犬とユーザーの能力が認められて初めて補助犬と補助犬ユーザーとして、補助犬法に基づいて、補助犬を同伴した社会参加が可能となる
【書類の携帯の義務】
補助犬ユーザーは、A. 身体障害者補助犬認定証(盲導犬使用者証)と B.身体障害者補助犬健康管理手帳を所持し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければなりません(p.12,13 参照)。これらは、厚生労働省令で定められた書類であり、補助犬が法律に基づいて訓練・認定され、補助犬が公衆衛生上の危害を生じさせるおそれがない旨を明示するものです。
【表示の義務】
補助犬には、補助犬であることを記す表示を補助犬の胴体に見やすいようにつけなければなりません(p.14 参照)。この表示により、ペットと一目で区別することができます。また、補助犬が何らかの問題を起こした際には、その表示に記載されている補助犬の認定を行った指定法人に連絡することが可能です。
【身体障害者補助犬認定証(写真提供:社会福祉法人日本介助犬協会)】
身体障害者補助犬認定証(○○犬)、ユーザーと犬の写真、使用者名、性別、生年月日、使用者の住所および連絡先、犬の名前、性別、生年月日、犬種、毛色、毛質、狂犬病予防法に基づく登録番号、認定番号、認定年月日、指定法人名、指定法人の代表者名、指定法人の住所及び連絡先、訓練事業者名、訓練事業者の代表者名、訓練事業者の住所及び連絡先
【盲導犬使用者証 (写真提供:公益財団法人日本盲導犬協会)】
盲導犬使用者証、ユーザーと盲導犬の写真、氏名、犬名、登録番号、認定日、ユーザーの氏名・性別・住所・電話番号・生年月日・手帳番号、犬名・性別・犬種・色・生年月日、認定者の事業者名・住所・電話番号
ポイント!
補助犬の同伴を受け入れる際に、書類の提示を求めることは失礼に当たりません。書類を提示できない場合、国が指定した補助犬の法人以外の組織が独自に発行した証明書を提示された場合は、法令上、受け入れの義務はありません。
【身体障害者補助犬健康管理手帳】
身体障害者補助犬法第12条第2項で定める書類、補助犬使用年月日、獣医師による健康管理記録、予防接種・健康管理等の記録、犬の名前・性別・犬種・生年月日・狂犬病予防法に基づく登録番号・毛色・毛質・使用者の名前・マイクロチップ番号
【1.表示例(介助犬)】
介助犬が着ているケープの背中ポケットに入っている。介助犬、認定番号、認定年月日、犬種、認定を行った指定法人の名称、指定法人の住所及び連絡先(写真提供:日本介助犬協会)
【2.表示例(盲導犬)/ハーネスの形/ハーネスバック】
バーハンドルとU字ハンドルがある。ハーネスバッグには介助犬と同様の表示が書かれている表示が入っている。(写真提供:公益財団法人日本盲導犬協会)
(1)補助犬の衛生管理
飲食店で安心して補助犬ユーザーを受け入れる上で、大切なことは犬の健康と衛生状態、さらに行動の管理です。犬は感染症に関する予防・管理方法が確立している動物です。さらに、適切に訓練され、行動を管理されている補助犬は、感染症のリスクを高める行動をとることはありません。
1.健康管理 狂犬病予防接種、混合ワクチン接種、外部・内部寄生虫駆除、定期健康診断
【イラスト】獣医師に診察されている補助犬
2.衛生管理 定期的なシャンプー、毎日のブラッシング
【イラスト】補助犬のブラッシングをするユーザー
3.行動管理 咬まない、吠えない、むやみに人や物を舐めない、適切な場所でユーザーの指示により排泄する
【イラスト】ペットシーツの上で排泄する補助犬
(2)犬に対する不安(アレルギー/恐怖)のある人への対応
補助犬同伴の拒否事例として、「犬アレルギーがある(犬が怖い)利用客がいるかもしれない」といわれることがあります。犬アレルギーの原因はおもにフケと唾液ということが分かっています。そのため、補助犬は、特にフケや唾液のついた毛の飛散が少なくなるように、補助犬ユーザーがこまめに衛生管理をし、周囲に迷惑をかけないように気をつけています。しかしながら、アレルギーのある人にとっては犬が清潔か否かにかかわらず、犬の存在そのものが精神的に負担となることが考えられます。そのため、補助犬ユーザーも、アレルギーがある人への配慮としてアレルギー症状の心配がないように、可能な限り近くの席になることがないようにと考えています。犬アレルギーのある利用客がいた場合、スタッフが、補助犬ユーザーと犬アレルギーがある双方の利用客が可能な範囲で距離をとれるよう配慮をすることで、双方に安心してご利用いただくことができるでしょう。
【イラスト】盲導犬、介助犬、聴導犬
犬が怖い人に対しても、対応はアレルギーのある人と同様です。「怖い」という感情は自然に湧いてくるものですし、補助犬ユーザーにとっても心配ですので、可能な範囲で距離をとれるよう配慮することが、双方にとって適切な対応となります。次頁は、犬アレルギーや犬が怖い人などへの声かけの例です。
~犬アレルギーのある人/犬が怖い人がいた場合の声かけ(例)~
補助犬ユーザーに対して「犬アレルギーがある(犬が怖い)とのことでしたので、少しお席を離させていただきました」「犬アレルギーのある(犬が怖い)方からお申し出がありました、お互いに少し距離を取るために、あちらの席にご移動いただいてもよろしいでしょうか」
アレルギーのある(犬が怖い)方に対して
「離れたお席(場所)をご案内しますので、安心してご利用ください」「お互いに距離を取るために、あちらの席にご移動いただいてもよろしいでしょうか」
(3)ペットとの見分け方
補助犬と補助犬ユーザーは、一般のペットと飼い主とは異なります。補助犬は、胴体の見やすいところに p. 18 のような表示をつけることが義務付けられています。
また、盲導犬は白または黄色のハーネス(胴輪, p.18)をつけていることで、見分けることもできます。
(4)補助犬以外の役割を持つ犬との区別
社会で働く犬の中には、補助犬の他に病院や高齢者施設で働くセラピー犬などもいます。また、海外では、日本の身体障害者補助犬法のもとでは補助犬として認められていない種類の犬(サービスドッグまたはアシスタンスドッグ)が、障害のある人のサポートをしている例があります(精神障害、情緒障害、アレルギー障害など)。しかし、これらはいずれも身体障害者補助犬法における補助犬には含まれず、施設等の利用においては「ペット」と同様に扱われます。しつけが行き届いた犬であっても、法律上は同伴が認められた犬ではないため、補助犬と混同しないよう注意が必要です。
(5)海外で育成された補助犬
日本では、身体障害者補助犬法に基づき認定された補助犬と補助犬ユーザーは施設等の利用が認められています。他方、海外で育成、訓練された補助犬と補助犬ユーザーはこの法律の対象となりません。そのような海外から補助犬を伴って来日した補助犬ユーザーが、日本に滞在する間、安心して過ごすことができるよう、海外の連合会所属の訓練事業者による訓練が行われており、日本の基準と同等と認められる場合は、日本の補助犬の認定団体より「期間限定証明書」が発行されています(下図)。これは海外の補助犬が日本の補助犬と同様の扱いとなるための仮免のような制度です。
証明書発行の対象となる補助犬は、盲導犬(Guide Dog)、介助犬(Mobility Service Dog)、聴導犬(Hearing Dog)の 3 種です。
前述した身体障害以外の障害をサポートするサービスドッグは、証明書発行の対象となりません。
例えば、精神障害をサポートする犬(Psychiatric Service Dog)、エモーショナルサポートドッグ(Emotional Support Dog)、アラート犬(Alert Dog)、
セラピー犬(Therapy Dog)などは、日本では施設等の利用において、ペットと同様に扱われます。
【期間限定証明書】
海外補助犬使用者 期間限定証明書(表示)〇〇犬 ・使用者氏名 ・犬種 ・輸出国 ・入国/出国予定年月日 ・発行した指定法人 ・育成した法人の名称(実際は英語も併記)
<参考>厚生労働省ポータルサイト(海外からの補助犬ユーザーへの案内)
“Assistance Dogs for Persons with Physical Disabilities” Portal Site
https://www.mhlw.go.jp/english/policy/care-welfare/welfaredisabilities/assistance_dogs/index.html
右側にQRコード
ポイント!海外には、補助犬法のような補助犬とユーザーの認定制度がない国があります。そのような国では、補助犬とユーザーの質が必ずしも保証されているわけではないため、日本への入国に際して、その質を保証するためにも期間限定証明書の発行が大切です。
(6)さまざまな名称で表される犬
アシスタンス・アニマル(Assistance Animal)、アシスタンス・ドッグ(Assistance Dog)、サービス・アニマル(Service Animal)、サービス・ドッグ(Service Dog)、サポート・アニマル(Support Animal)、サポート・ドッグ(Support Dog)、エモーショナル・サポート・アニマル(Emotional Support Animal)、コンフォート・ドッグ(Comfort Dog)。英語では、障害のある人をサポートするための動物を表す複数の単語があります。これらの単語は、国や法律、団体によって使われ方がバラバラです。正しい身体障害者補助犬の知識がないと、それらしい名称を言われると、補助犬だと勘違いして、受け入れてしまうかもしれません。海外からの補助犬ユーザーを受け入れる際は、期間限定証明書の有無で判断すると間違いがないでしょう。
(7)合同訓練(共同訓練)中の補助犬候補犬の受け入れ
合同訓練(共同訓練)とは、認定を受ける前に行う、補助犬を伴って実際に日常生活を送るための訓練です。この段階は、訓練の最終段階であり、補助犬に求められる基礎的な訓練は完了しています。この状態の犬はまだ認定前であるため、正式には補助犬と補助犬ユーザーとしては認められていません。ただし、この時期の訓練は訓練事業者が補助犬ユーザーの指導を行っています。訓練最終段階において医療機関での訓練は、補助犬と同様に受け入れるという柔軟な対応ができると良いでしょう。
(8)新型コロナウイルスによる影響
2019 年に発生した新型コロナウイルス感染症は、補助犬ユーザーの生活にも大きな影響を与えています。犬の新型コロナウイルスへの感染も報告されていますが、その症例は人と比べると極めてわずかです(アメリカ国内での犬への感染数は合計 16 例(2021 年 2 月時点:米農水省, 2021*))。現在の知見では、犬が人への新型コロナウイルスの感染源になるリスクは低いと考えられています(米国疾病予防管理センター, 2021**)。また、新型コロナウイルスが犬から人に感染したという事例はありません。これらの情報をふまえて、以下の点にご配慮願います。
* U.S. Department of Agriculture (2021) Cases of SARS-CoV-2 in Animals in the United States.
https://www.aphis.usda.gov/aphis/ourfocus/animalhealth/sa_one_health/sarscov-2-animals-us
** Centers for Disease Control and Prevention (2021) COVID-19 Frequently Asked Questions Pets and Animals
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/faq.html#Pets-and-Animals
補助犬ユーザーを迎えた経験のない飲食店にとって、補助犬とはいっても「犬」を迎え入れることには少なからず不安もあるでしょう。補助犬ユーザーを受け入れている飲食店は、初めは受け入れに消極的でも、補助犬の店内での様子を実際に見ることで、その後は安心して補助犬ユーザーを受け入れられるということが多くみられます。とはいえ、補助犬ユーザーは日本ではまだ多くありません。実際に補助犬ユーザーを受け入れる経験がなければ、不安な思いを抱えたままになりかねません。本章では、飲食店が抱える不安を取り上げ、受け入れの実際を説明していきます。また、補助犬ユーザーの飲食店利用時の様子も動画で見られるようになっています(以下、URL、QR コード参照)。「知らないこと」による不安を少しでも軽減できるかと思います。また、ガイドブックでも解決できない不安や疑問については、補助犬ユーザーに直接伝えてみましょう。また、資料「担当窓口」(p.58)に問い合わせすることも可能です。
動画「まずは受け入れてみませんか?~補助犬使用者の受け入れ方」(事業者用)(日本補助犬情報センター監修・24 時間テレビチャリティー委員会制作著作)
URL:https://www.youtube.com/watch?v=AD8u7d_tszk&feature=youtu.be(2:50~)QR コード
〈ポイント!〉
不安がある場合は、利用を断るという方法を選ぶのではなく、その不安を補助犬ユーザーに伝えて解決策を一緒に考えるようにします。不安を明確にした上で、ユーザーとお店が話し合い、円満に解決策を見いだしたケースも多くあります。
来店する方に美味しい食事を楽しんでいただくために、「不安」となる要素を最小限にしたいという考えは自然なことです。そのようなこともあり、飲食店を利用しようとして断られた経験のある補助犬ユーザーは、「犬が苦手な人がいるかもしれない」、「他のお客様の迷惑になるので」という理由をあげられることがよくあります。しかし、『かもしれない』で補助犬ユーザーの利用を拒否するのではなく、お店側は障害のある人や補助犬のことを良く知り、補助犬ユーザーにはお店の状況を理解してもらうことで、お互いが気持ちよく過ごせる方法を考えることが望まれます。一方、犬が苦手、犬に対するアレルギーがある、子どもが犬にちょっかいを出してしまうかもしれない…など、補助犬であってもさまざまな不安を抱く人がいることも事実です。補助犬ユーザーをお迎えする際には、そのような人への配慮も合わせて必要となります。すべての人に安心して飲食を楽しんでいただくためには、場面に応じたお声かけが有効です。
【席の案内】
補助犬を同伴していない利用客と同様に対応します。補助犬が足元に伏せることを考えて、少しゆとりのあるスペースを選んでも良いでしょう。ただし、お店のどこに座りたいかは、利用客によって異なります。「補助犬を連れていたらこの席でなければならない」という決まりは作らずに柔軟に対応することが望ましい対応です。特に、疎外感を感じるようなお店の隅などをご案内することは適切ではありません。一方、すぐそばの利用客に配慮をしながら気を張って食事をするよりも、他の利用客から離れた席の方が落ち着くという補助犬ユーザーもいます。店内が混んでおらず、利用客が座席を選べる状況にあれば、希望に応じたご案内ができると良いでしょう。
【お声かけの例】
スタッフ:「いらっしゃいませ。ご希望のお席はありますか?」
補助犬ユーザー:「足元に余裕のある席をご案内いただけると嬉しいです」
スタッフ:「ただ今、お店の入り口近くと、お店の奥に、4 人掛けの席が空いております。どちらのお席がよろしいでしょうか?」
補助犬ユーザー:「では、奥の 4 人掛けの席でお願いします」
スタッフ:(誘導してから)「こちらでございます。補助犬が伏せるスペースを確保するために、椅子を一つ外しましょうか?」
補助犬ユーザー:「どうもありがとうございます。」
※店内のスペースや混み具合によって、次頁のお声かけをすることも有効です。
スタッフ:「いらっしゃいませ。ご来店ありがとうございます。店内のスペースが狭いため(店内が混んでいるため)、お近くのお客様にお声かけしてまいりますので、少々お待ちいただけますでしょうか。」
ユーザー:「はい、わかりました」
(近くの利用客に対して)
スタッフ:「お食事中失礼します。補助犬を連れた方がすぐお隣にお座りになられます。補助犬なのでしっかり管理されており、特別な問題はございませんが、何かご不安な点はございますでしょうか?」
〈パターンA 了承が得られた場合〉
お客様:「補助犬なら大丈夫ですよ」
スタッフ:「どうもありがとうございます。それではご案内させていただきます。お食事中に何かお気づきのことがありましたら、スタッフにお声がけください。」
〈パターンB 了承が得られなかった場合〉
お客様:「補助犬は知っているのですが、どうしても犬が苦手なので、お隣の席はちょっと…」
スタッフ:「承知いたしました。それでは離れたお席にご案内させていただきますのでご安心ください。お食事中失礼いたしました。」
〈パターンC 了承が得られず、どの席もご案内できない場合〉
(ユーザーへの声かけ)
スタッフ:「お待たせいたしました。お近くのお客様に確認したところ、犬が怖くて補助犬であっても近くにいることができないということです。大変申し訳ございませんが、あと15分ほどお待ちいただけますでしょうか。席が空きましたら、すぐにご案内させていただきます。」
※パターン C のような状況になった場合、お店として補助犬を同伴しての利用を受け入れる姿勢をお伝えすることが大切です。今は無理でもどのような状態になったら受け入れが可能かを明確にお伝えするようにしましょう。
※混雑時など、スタッフによる他の利用客への説明が不十分だったとき、他の利用客からの苦情といったトラブルが発生する可能性があります。利用者への周知資料(p.56)は、このようなことが発生しないよう短時間で利用客の理解を得るためにも有効です。
スタッフ:「いらっしゃいませ。お近くの席の方が補助犬を同伴していらっしゃいます。補助犬なのでしっかり管理されており、特別な問題はございませんが、すぐお隣のお席でもよろしいでしょうか?」
※説明の際に、p.56 の案内を一緒にお見せして理解を求めても良いでしょう。p.56 の「厚生労働省リーフレット「もっと知ってほじょ犬」(添付資料3)」は、補助犬や補助犬ユーザー、補助犬法についてまとめてあるハンドブックです。補助犬ユーザーの受け入れをスタッフや他の利用客に周知するために配布して使用することができます。本ハンドブックは、都道府県・政令指定都市・中核市の身体障害者補助犬法担当窓口(p.58)で配布しています。お近くの担当窓口にご連絡ください。
お店の環境はそれぞれに異なり、数坪の小さなスペースで営業しているお店から、100人を超える人が来店できるような大きなお店もあります。また、車椅子でも来店できるようスロープやエレベーターを設置しているお店もあれば、入口まで階段しかないお店もあります。小さなお子さんを連れた人が、お店を利用する際、小さなお子さんが居ても安心して食事できるかを確認するように、補助犬ユーザーも補助犬を同伴して安心して食事できるか、車椅子を使用している場合は車椅子でも入店できそうかなど、判断して実際にお店の利用を決めます。しかし、飲食店に関しては、お店のスタッフが「十分なスペースがない」と判断して、補助犬の同伴を拒否するケースが見受けられます。補助犬ユーザーの食事中に補助犬が待機するのに必要なスペースは、補助犬や補助犬ユーザーによって異なります。椅子に座った補助犬ユーザーの足と椅子の間に入り込んで伏せるような補助犬は、大きなスペースが必要になることはありません。実際、多くの補助犬は補助犬ユーザーの足元やテーブルの下で伏せて待つ(寝る)というマナーを身に着けています。また、補助犬の中にはトイプードルのように体の小さな犬種もいます(特に聴導犬)。「補助犬」と聞いて、もしくは、同伴している補助犬を見て、入店は無理だと思い込んでお断りするようなことはせず、スペースに心配がある場合は、「店内は席の間隔が狭いのですが、どれくらいのスペースがあれば大丈夫でしょうか?」とお伝えし、補助犬ユーザーに判断してもらうと良いでしょう。次頁以降のイラストや写真は、様々な座席の形態やスペースにおいて、補助犬が待機している様子です。
1.四つ足テーブルや椅子の下
【イラスト】お茶を飲むユーザー、介助犬はテーブルの下で待機している。
【イラスト】お茶を飲むユーザー、盲導犬は椅子の下で待機している。
2.座敷席1
【イラスト】座敷で食事をするユーザー、聴導犬は敷物の上で待機している。
3.座敷席2
【イラスト】座敷のテーブルで食事をするユーザー、介助犬はテーブル下の敷物の上で待機している。
〈ポイント!〉
補助犬ユーザーは、靴を脱いで入るような場所では、持参したタオル等で補助犬の足を綺麗にします。汚れた足で床を汚すことはありませんので、ご安心ください。また、犬の足拭きにサポートが必要なユーザーもいます。「足を拭きましょうか?」というようなお声掛けをしていただけると助かります。
【足元の空間が取れない場合】
足元のスペースが狭くてどうしても現状のままでは補助犬の同伴が難しい場合もあるかもしれません。以下は、足元に十分なスペースを取ることが難しい場合の対応の例です。
1.椅子を一つ外す
一つ椅子を外すだけでも十分なスペースを確保することができます。
【イラスト】食事中のユーザーの隣の椅子を外して、盲導犬の待機場所にしている
2.壁際(店内奥)の席を案内する
壁際もしくは店内の奥や角の席にご案内することで、補助犬が通路に伏せていても邪魔にならない場所を選ぶことができる場合があります。ただし、補助犬をまたがないと人が通ることができないというようなスペースしか確保できない場合は、その点を補助犬ユーザーに伝えましょう。補助犬の安全を確保することは補助犬ユーザーの義務です。
3.隣のテーブルとつなげる
隣のテーブルとつなげることで、そのテーブルの足元に補助犬を伏せさせることができます。
【食品衛生法における補助犬の扱い】
食品を扱う場所において、衛生管理は最も徹底されている事項といえます。その空間に「動物」が入ることに不安を感じる人もいるでしょう。また、補助犬の同伴の拒否事例では、「保健所からの指導で犬は店内に入ることができない」と答えるケースも目立っています。しかし、食品衛生法及び同法に基づいて各自治体が定める条例において、補助犬が飲食店に入ってはいけないということは明記されていません。条例では作業場内(厨房)に動物を入れないことが条例に記載してありますが、客席への補助犬の同伴を禁止するものではありません。補助犬の衛生・行動・健康管理は、身体障害者補助犬法で求められている補助犬ユーザーの義務です。このような義務を果たすことのできる者だからこそ、補助犬ユーザーとして認定を受け、補助犬を同伴しての施設等の利用が認められています。ただし、万が一、犬が異臭を放っているなど、異常を感じた場合は、受け入れる義務はありません。店内に同伴できない理由を明確に伝えましょう。補助犬と偽ったペットを同伴しようとするケースも疑われます(→ペットとの見分け方は p.21 参照)。「補助犬」といわれたからといっても、補助犬ユーザーの義務が果たされていない場合は、その理由を明確に伝えて利用をお断りすることができます。しかし、逆に、補助犬ユーザーが義務を果たしているにも関わらず、補助犬の同伴を認めることができない明確な理由なしに、「犬」というだけで、補助犬の同伴を拒否することはできません。【アレルギーについて】⇒p.20 参照
【イラスト】店の入り口で店員が「犬はダメなんです、保健所の指導で犬は入れないことになっています」と盲導犬ユーザーに言っている。このような対応はしてはいけない。
補助犬ユーザーは受け入れたいと思っているが、「実際に補助犬ユーザーが来店したら、どのように対応したらよいかわからない」という声も聞かれます。その中には、補助犬への対応と障害のある人への対応の両方が分からないという場合もあるでしょう。補助犬ユーザーへの対応については、「3-5.様々な場面における受け入れ(p.36)」で詳しく説明します。
(1)全体に共通すること
補助犬ユーザーは、他の利用客と同じように「自然に接してもらうことが一番嬉しい」と言うことが多いです。補助犬を同伴していても過剰な気遣いは不要であり、これから示すように、それぞれの障害のある人に配慮した接し方を心がけた上で、貴店のホスピタリティ(おもてなし)の精神で、一人の利用客として接すれば、補助犬ユーザーにも快適に貴店での飲食を楽しんでもらえるでしょう。
〈補助犬ユーザーへの対応〉
〈補助犬への対応〉
〈まずは声かけから―「何かお手伝いしましょうか?」〉
①盲導犬ユーザー・視覚に障害のある人への対応
盲導犬は視覚に障害のある人の安全な歩行をサポートしていますが、目的地までの道のりは盲導犬ユーザーが把握しています。段差や曲がり角、障害物への盲導犬のサポートを手掛かりに、その都度、盲導犬ユーザーが盲導犬に進む方向について指示を出しながら歩行しています。そのため、盲導犬ユーザーが道のりを把握していない場所(新しい場所)では、盲導犬に進むべき方向を伝えることができません。そのため、盲導犬を連れていても、座席やお店のトイレなど、誘導のサポートを必要とすることもあります。お手伝いが必要かどうかは、本人に確認しましょう。
〈コミュニケーション/情報提供〉
〈視覚に障害のある人の誘導〉
誘導するときは
誘導のポイント
やってはいけないこと
【イラスト】盲導犬ユーザーに肘を貸して誘導する様子。盲導犬のハーネスや白杖には触らない。
〈メニューや食事の説明〉
【イラスト】クロックポジションの図。6時に目玉焼き、12時にサラダ、2時にスープ、1時にミカン、10時に水と塩、4時と8時にカトラリーがある。
②介助犬ユーザー・肢体不自由のある人への対応
落としたものを拾う、小さな段差を越えるなど、介助犬が補助できる動作もありますが、人のサポートが必要になる場合もあります。車椅子を利用する介助犬ユーザーの場合、車椅子の援助が必要になる場合もあります。お手伝いが必要であると思われる場面では、何かできることがあるかお声かけすると良いでしょう。
〈肢体不自由のある人の誘導〉
【写真】バリアフリートイレの写真。オストメイト対応の洗面台や手すりなどがある。
車椅子を使用している人の介助のポイント
小さな段差の移動(登り)
【イラスト】介助犬ユーザーの車いすを押して段差を乗り越える様子
③聴導犬ユーザー・聴覚に障害のある人への対応
聴導犬はインターフォンや火災報知機などの音を知らせることはできますが、店内放送や人の会話の内容を伝えることはできません。音声のみの案内で、聴覚に障害のある人に情報が伝わっていない可能性がある際は、ご本人に情報を伝えると良いでしょう。
〈聴覚に障害のある人との会話〉
声をかけるときの方法(例)
手話ができなくても、身振りや数字などを指で表すだけでも、聴覚に障害のある人とのコミュニケーションの助けになります。
口をはっきりあけてゆっくり話すことで意志の疎通ができる場合もあります。このとき、聴覚に障害のある人は相手の唇の動きを読み取るので、下を向いて話したり、マスクや手で口を覆わないようにします。※感染症などの懸念がある場合はマスク着用の上で、上記の筆談ボードなどを活用しましょう。
スマートフォンやタブレット端末で文字入力したり、UD トーク※などの音声認識ソフトをインストールしている場合は、スマートフォンに向かって話すことで、話した内容が文字になって画面に表示されます。どのような方法で伝えるとよいかは、ご本人に確認しましょう。※コミュニケーションの「UD = ユニバーサルデザイン」を支援するためのアプリ
【イラスト】筆談をしながら、口をはっきり開けて聴導犬ユーザーに話しかけている様子。スマートフォンを利用して、文字で聴覚障害者と話をしている様子。
(2)予約を受ける際の対応
基本的に他の利用客と同様に予約を受けます。店内のスペースや当日の混み具合を想定して、必要に応じて、以下のフローチャートのように、店内スペースの関係で席の調整が難しい場合は、正式に予約を受ける前に、先に予約のあった利用客に確認を取るという対応も考えられます。犬が怖いなど、やむを得ない理由により、他の利用客の了承が得られなかった場合は、お店から利用客への説明・説得にも関わらず理解が得られなかった経緯を伝えて、予約が可能な他の時間帯を補助犬ユーザーにご案内します。補助犬ユーザーよりも後に予約をした方には、必要に応じて、近くの席に補助犬を同伴した利用客がいることをお伝えしておくと安心です。※このような手続きは、多忙な飲食店にとってハードルが高いものでしょう。ただし、国や自治体による働きかけにより、補助犬同伴の受け入れに対する社会の理解は今後深まっていくことが期待されます。特に若い世代は小学校の授業等で補助犬や補助犬ユーザー、補助犬法のことを勉強するようになっており、様々な施設等での受け入れが認められていることを理解しているようです。このような場合、あえて情報提供をしなくても、問題になることはないでしょう。お店の利用客や地域の特性(補助犬ユーザーの多い地域であるか)に合わせて、対応を検討すると良いでしょう。
【図】
(3)予約時に補助犬の同伴について申し出がなかった場合
他の利用客と同様に座席に案内します。ただし、補助犬の同伴を想定していなかったことで、足元の狭いスペースしかない、隣席との距離がとても近い席を確保していたというケースも考えられます。その場合は、事情を説明し、隣席の利用客に声かけをしてからのご案内になることを補助犬ユーザーに伝えてください。その後の対応は p.28 と同様です。
(4)座敷席を利用したとき
補助犬を同伴して座敷席で食事をする場合、補助犬ユーザーは補助犬の足を拭き、持参した敷物の上に補助犬を待機させます。補助犬ユーザーは、日頃のブラッシングにより抜け毛をできる限り除去する努力をしています。また、抜け毛への配慮として洋服や大きめのケープを着せることもあります。そのため、補助犬ユーザーの利用後に時間のかかる清掃をしなければならないということは基本的にありません。利用後に補助犬が待機していたスペースを確認し、もし毛が落ちているということがあれば、濡れタオルで拭き取る、粘着テープで掃除するなど、清掃へのご協力をお願いします。
(5)ビュッフェの利用時
ビュッフェ形式の飲食店の場合、おひとりでお食事をとりに行くことが難しい場合があります。本人にお手伝いが必要かお声かけして、必要があればお手伝いします。ビュッフェのお食事をとり分けて席まで運んでもらうことを希望する場合もあります。どのようなメニューがあるかを説明し、希望のお食事をお聞きします。補助犬ユーザーが食事している際、補助犬は補助犬ユーザーの足元、例えば、テーブルの下や椅子を 1 つ外したスペースなど、他の利用客の邪魔にならない場所に伏せて待機します。補助犬ユーザー自身がお食事を取りに行く際は、補助犬を同伴する場合もあれば、座席に待機させる場合もあります。
【イラスト】飲食店で店員のサポートを受けながら食事をするユーザー、盲導犬はテーブルの下で待機している。
(6)問題とその対処
1.補助犬の尻尾や足先が通路にはみ出ている
伏せている補助犬の尻尾や足先が通路にはみ出ていたら、スタッフや他の利用客が通路を移動する際に、誤って踏んでしまうかもしれません。そのような場合は、補助犬ユーザーに伝えて補助犬の位置を調整してもらいます。
【イラスト】通路にはみ出している補助犬のしっぽを踏みそうになる人
2.利用客とのトラブル
補助犬ユーザーの受け入れについて、犬の受け入れに否定的な意見(例:「なぜ犬がいるのか?」「犬はお店に入れてはいけない」)が他の利用客からあった場合、補助犬同伴の受け入れは義務であること、衛生・健康・行動管理が徹底されており安全な存在であることの説明をします。犬アレルギーや犬嫌いなどの場合は、補助犬ユーザーとの距離を離します。これらの対応を行っても解決せず、受け入れ側と利用客とのトラブルに発展しそうな場合は、補助犬担当窓口(p.58)に問い合わせることも可能です。第三者からの説明により利用客が納得する場合もあります。
3.ペットの同伴
補助犬に便乗してペットを同伴した人がいた場合や、補助犬(特に小型犬の聴導犬)を見て、「なぜあの犬は良くて、うちの〇〇ちゃんはお店に入ったらダメなの?」と言われた場合は、補助犬はペットではないこと、補助犬法に則り、認定を受けた補助犬と補助犬ユーザーのみが、施設等の利用を認められていることを伝えます。
4.補助犬(補助犬ユーザー)による迷惑行為
補助犬の同伴について、補助犬法では「身体障害者補助犬の同伴により当該施設に著しい損害が発生し、又は当該施設を利用する者が著しい損害を受けるおそれがある場合その他のやむを得ない理由がある場合は、この限りではない。」としています。万が一、補助犬や補助犬ユーザーに相応しくない行動や様子が見られた場合は、その理由を明確に補助犬ユーザーに伝え、同伴を認められないことを伝えます。例えば、補助犬とされる犬が激しく吠えている、犬から悪臭がする、人に飛びついたり※物を噛むなど、補助
犬ユーザーが犬の行動を管理できていないなどがその例です。※聴導犬は音を知らせるために、人の太ももに両手をかける行動をとることがあります。これは補助作業の一部であり、興奮による人への飛びつきではありません。
5.受け入れに関して補助犬ユーザーとの間に意見の相違があったとき
一般の人が利用できる場所では、補助犬の同伴を受け入れることが原則です。ただし、犬アレルギーや犬に恐怖症のある人がいる場合などには、両者への配慮から、配慮が必要な人と補助犬ユーザーの両方(またはそのどちらか)が席を移動するなど、譲歩しなければならない場面も出てくる可能性があります。この場合、その理由や対応を補助犬ユーザーに伝えます。もし、受け入れ側と補助犬ユーザーの考えに相違があり、お互いに妥協点が見つけられない場合は、補助犬担当窓口の利用も一つの方法として考えられます。ただし、担当窓口は自治体に設置されているため、休日や夜間等に問い合わせることはできません。後日改めて話し合うことを補助犬ユーザーに提案してみると良いでしょう。
6.排泄・嘔吐等によるトラブルへの対応
急に補助犬の体調が不良となったことなどが原因で、トラブルが起こる可能性はゼロではありません。汚物は、迅速に補助犬ユーザーまたは補助犬ユーザーに依頼された人が片付けます。補助犬ユーザーが(特に盲導犬ユーザーが)排泄や嘔吐等に気がついていない場合には、注意を促します。
補助犬が店内に入ることに対して、何も準備をせずに「全く問題なし!いつでもウェルカム」と自信を持って言える飲食店はあまりないかもしれません。特に、補助犬に関してあまり知識がない、補助犬ユーザーの受け入れについて検討したことがない状態では、いくつもの「不安」が頭をよぎるのではないでしょうか。ここまで説明した必要最低限の情報をスタッフ一人ひとりが知ることで、多くの不安を解決できると思います。ここでは、どのスタッフが対応しても補助犬ユーザーを快く迎え入れられるように、必要な体制を整えるための手順を記載しています。体制を構築する際には、参考資料 1(p.54)のチェックリストも合わせてご活用ください。
【必要な知識の習得】
1.補助犬ユーザーと補助犬の基本情報の把握
2.受け入れの詳細の検討
【スタッフの教育】
3.スタッフ教育資料の準備
4.スタッフ教育資料の配布と教育
5.勉強会
補助犬ユーザーの受け入れには、お店のスタッフはもちろんのこと、他の利用客の理解も不可欠です。補助犬ユーザーの受け入れについて、複数の場面で周知を図ると、より理解も深まるでしょう。
1.店舗へのステッカーの貼付
【イラスト】店舗の入り口に補助犬啓発ステッカーが貼られている
2.周知資料の活用
「厚生労働省リーフレット「もっと知ってほじょ犬」(参考資料3, p.56)」は、補助犬や補助犬ユーザー、補助犬法についてまとめてあるハンドブックです。口頭で説明するだけではなく、あらかじめ準備した資料を利用客にお渡しすることで、大切な情報を漏れなくお伝えすることができます。本ハンドブックは、都道府県・政令指定都市・中核市の身体障害者補助犬法担当窓口(p.58)で配布しています。お近くの担当窓口にご連絡ください。
「利用客への周知資料(ポスター)(参考資料 4, p. 57)」は、店舗に掲示することで補助犬の同伴について周知することができます。添付資料 4 は、ダウンロードして貴店用に手直ししてご利用ください。
Q.犬が苦手なスタッフがいるのだが、受け入れを断ることは可能か?
補助犬の同伴を受け入れることは、誰もがその人らしい自立した生活を送ることのできる社会につながります。補助犬の同伴拒否に関して、人々の関心は「犬」の受け入れに注目が向きがちですが、実際には、補助犬の同伴を受け入れることは、「犬」の受け入れを求めているのではなく、基本的な「権利」の保障を求めているのです。つまり、補助犬を断ることは障害のある人自身を断ることと同じといえます。障害があることや補助犬を同伴していることが、社会参加の壁になるようなことがあってはなりません。一方、補助犬法は、補助犬ユーザーが補助犬とともに自立した社会参加の実現を推進していくために、犬の適切な管理という義務を補助犬ユーザーに課しています。これにより補助犬ユーザーの一層の社会参加を推進しようという理念があります。飲食店を含むすべての施設等において、補助犬を必要とする人の権利が保障される社会が望まれます。
補助犬と補助犬ユーザーに関する知識の習得
□ 法令順守(コンプライアンス):補助犬法と障害者差別解消法
□ 補助犬と生活する補助犬ユーザー
□ 補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)の役割
□ 補助犬の安全性(衛生・健康・行動)
□ 補助犬とペットの違い
□ 障害に合わせた接遇
店内のバリアフリーと設備
□ 店内のバリア(段差や障害物など)の把握
□ 店内のスペース(通路の幅など)や設備の把握
スタッフ教育
□ 補助犬ユーザー、補助犬に関する基本情報の案内(教育資料の配布)
□ 補助犬ユーザー、障害のある人の接遇に関する教育
□ 他の利用客への対応
他の利用客への啓発
□ 補助犬啓発ステッカーの貼付
□ 補助犬の同伴に関するポスター貼付
□ 周知資料の準備(厚生労働省リーフレット「もっと知ってほじょ犬」)
ダウンロード資料:https://www.jssdr.net/pdf/staff-food.docx QRコード
当店での補助犬ユーザーの受け入れについて
当店では身体障害者補助犬法、ならびに、障害者差別解消法に則り、補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)の同伴を受け入れています。また、不特定多数の者が利用する施設では補助犬同伴の受け入れが、補助犬法により義務付けられています。いつ補助犬ユーザーが利用しても適切に対応できるように、以下のポイントの把握をお願いします。
【イラスト】盲導犬ユーザー、介助犬ユーザー、聴導犬ユーザー
【席が近いお客様への声掛け】 ※「利用客への周知資料」も合わせてご活用ください。「補助犬を連れた方がすぐお隣にお座りになられます。補助犬なのでしっかり管理されており、特別な問題はございませんが、何かご不安な点がございましたらスタッフまでお声掛けください。」
ポケットサイズのハンドブックです。都道府県・政令指定都市・中核市の身体障害者補助犬法担当窓口(p.58)で入手可能です。また、以下の URL・QR コードより、データをダウンロードすることができます。
厚生労働省ホームページ:ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 福祉・介護 > 障害者福祉 > 身体障害者補助犬 > 5広報物等
URL: https://www.mhlw.go.jp/content/000636237.pdf
QR コード
ダウンロード資料:https://www.jssdr.net/pdf/user-food.docx QRコード
法律により補助犬を同伴しての利用が認められています
【イラスト】盲導犬ユーザー、介助犬ユーザー、聴導犬ユーザー
誰もが安心して楽しく飲食のできる空間づくりのために皆様のご協力をよろしくお願い申し上げます
※ペットの同伴はお断りしております。補助犬はペットではありません。〇△□店長
都道府県身体障害者補助犬法担当窓口一覧 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 令和3年4月1日現在
都道府県 担当課名 担当係名 電話番号
北海道 障がい者保健福祉課 社会参加係 011-204-5278
青森県 障害福祉課 社会参加推進グループ 017-734-9309
岩手県 障がい保健福祉課 障がい福祉担当 197-629-5448
宮城県 障害福祉課 地域生活支援班 022-211-2541
秋田県 障害福祉課 地域生活支援班 018-860-1332
山形県 障がい福祉課 障がい者活躍・賃金向上推進室 023-630-3303
福島県 障がい福祉課 共生社会担当 024-521-7170
茨城県 障害福祉課 自立支援グループ 029-301-3363
栃木県 障害福祉課 社会参加促進担当 028-623-3053
群馬県 障害政策課 地域政策支援係 027-226-2638
埼玉県 障害者福祉推進課 社会参加推進・芸術文化担当 048-830-3309
千葉県 障害者福祉推進課 障害保健福祉推進班 043-223-2340
東京都 計画課 社会参加推進担当 03-5320-4147
神奈川県 障害福祉課 社会参加推進グループ 045-210-1111
新潟県 障害福祉課 地域生活支援係 025-280-5212
富山県 障害福祉課 地域生活支援係 076-444-3213
石川県 障害保健福祉課 地域生活支援グループ 076-225-1426
福井県 障がい福祉課 共生社会グループ 0776-20-0338
山梨県 障害福祉課 地域生活支援担当 055-223-1461
長野県 障がい者支援課 在宅支援係 026-235-7104
岐阜県 障害福祉課 社会参加推進係 058-272-8309
静岡県 障害福祉課 身体障害福祉班 054-221-2366
愛知県 障害福祉課 社会参加推進グループ 052-954-6697
三重県 障がい福祉課 社会参加班 059-224-2274
滋賀県 障害福祉課 社会活動係 077-528-3542
京都府 障害者支援課 スポーツ・文化芸術等社会活動推進係 075-414-4599
大阪府 障がい福祉室自立支援課 社会参加支援グループ 06-6941-0351
兵庫県 ユニバーサル推進課 社会参加支援班 078-341-7711
奈良県 障害福祉課 社会参加促進係 0742-27-8922
和歌山県 障害福祉課 在宅福祉班 073-441-2533
鳥取県 障がい福祉課 社会参加推進室情報アクセス担当 0857-26-7201
島根県 障がい福祉課 療育・相談支援グループ 0852-22-6527
岡山県 障害福祉課 福祉推進班 086-226-7362
広島県 障害者支援課 自立・就労グループ 082-513-3155
山口県 障害者支援課 社会参加推進班 083-933-2765
徳島県 障がい福祉課 社会参加・啓発担当 088-621-2238
香川県 障害福祉課 地域生活支援グループ 087-832-3292
愛媛県 障がい福祉課 在宅福祉係 089-912-2423
高知県 障害福祉課 地域生活支援担当 088-823-9634
福岡県 障がい福祉課 社会参加係 092-643-3264
佐賀県 障害福祉課 地域生活支援担当 0952-25-7064
長崎県 障害福祉課 地域福祉班 095-895-2453
熊本県 障がい者支援課 社会参加班 096-333-2235
大分県 障害者社会参加推進室 地域生活支援・芸術文化スポーツ推進班 097-506-2725
宮崎県 障がい福祉課 社会参加推進・管理担当 0985-32-4468
鹿児島県 障害者支援室 地域生活支援係 099-286-2746
沖縄県 障害福祉課 地域生活支援班 098-866-2190
政令指定都市身体障害者補助犬法担当窓口一覧
政令指定都市 担当課名 担当係名 電話番号
札幌市 障がい福祉課 事業管理係 011-211-2936
仙台市 障害企画課 社会参加係 022-214-8151
さいたま市 障害支援課 地域生活支援係 048-829-1308
千葉市 障害者自立支援課 企画班 043-245-5175
横浜市 障害自立支援課 福祉給付係 045-671-3891
川崎市 障害者社会参加・就労支援課 社会参加支援担当 044-200-2928
相模原市 高齢・障害者福祉課 障害福祉班 042-707-7055
新潟市 障がい福祉課 在宅福祉係 025-226-1239
静岡市 障害福祉企画課 企画管理係 054-221-1197
浜松市 障害保健福祉課 総務調整グループ 053-457-2630
名古屋市 障害企画課 福祉係 052-972-2587
京都市 障害保健福祉推進室 社会参加推進担当 075-222-4161
大阪市 障がい福祉課 06-6208-8071
堺市 障害施策推進課 社会参加係 072-228-7818
神戸市 障害福祉課 調整係 078-322-6579
岡山市 障害福祉課 福祉係 086-803-1236
広島市 障害福祉課 082-504-2147
北九州市 障害福祉企画課 社会参加推進担当 093-582-2453
福岡市 障がい者支援課 差別解消・交流係 092-711-4985
熊本市 障がい保健福祉課 企画調整班 096-328-2519
中核市身体障害者補助犬法担当窓口一覧
中核市 担当課名 担当係名 電話番号
函館市 障がい保健福祉課 社会参加・事業担当 0138-21-3263
旭川市 障害福祉課 障害事業係 0166-25-6476
青森市 障がい者支援課 相談チーム 017-734-5319
八戸市 障がい福祉課 障がい福祉グループ 0178-43-9106
盛岡市 障がい福祉課 相談認定係 019-651-4111
秋田市 障がい福祉課 医療給付担当 018-888-5663
山形市 障がい福祉課 障がい福祉第一係 023-641-1212
福島市 障がい福祉課 障がい庶務係 024-525-3748
郡山市 障がい福祉課 管理係 024-924-2381
いわき市 障がい福祉課 支援係 0246-22-7485
水戸市 障害福祉課 認定係 029-350-8084
宇都宮市 障がい福祉課 福祉サービスグループ 028-632-2363
前橋市 障害福祉課 福祉サービス係 027-220-5711
高崎市 障害福祉課 給付担当 027-321-1245
川越市 障害福祉課 福祉サービス担当 049-224-5785
川口市 障害福祉課 支援第1・第2係 048-259-7926
越谷市 障害福祉課 048-963-9164
船橋市 障害福祉課 相談支援係 047-436-2309
柏市 障害福祉課 事業調整担当 04-7167-1136
八王子市 障害者福祉課 042-620-7479
横須賀市 障害福祉課 046-822-9398
富山市 障害福祉課 障害福祉係 076-443-2056
金沢市 障害福祉課 企画庶務係 076-220-2289
福井市 障がい福祉課 企画係 0776-20-5435
甲府市 障がい福祉課 相談支援係 055-237-5339
長野市 障害福祉課 企画管理担当 026-224-5030
松本市 障害福祉課 障害福祉担当 0263-34-3212
岐阜市 障がい福祉課 指導係 058-214-2136
豊橋市 障害福祉課 0532-51-2354
岡崎市 障がい福祉課 障がい1係 0564-23-6867
一宮市 障害福祉課 障害福祉グループ 0586-85-7698
豊田市 障がい福祉課 総務担当 0565-34-6751
大津市 障害福祉課 管理係 077-528-2745
豊中市 障害福祉課 企画係 06-6858-2266
吹田市 障がい福祉室 給付担当 06-6384-1347
高槻市 福祉相談支援課 072-674-7171
枚方市 地域健康福祉室 障害福祉担当総務・事業グループ 072ー841ー1457
八尾市 障がい福祉課 障がい福祉係 072-924-3838
寝屋川市 障害福祉課 総務係 072-838-0382
東大阪市 障害施策推進課 06-4309-3183
姫路市 障害福祉課 給付担当079-221-2305
尼崎市 障害福祉課 障害者福祉担当06-6489-6397
明石市 障害福祉課 障害者施策担当078-918-5142
西宮市 生活支援課 0798-35-3157
奈良市 障がい福祉課 在宅支援係 0742-34-4593
和歌山市 障害者支援課 073-435-1060
鳥取市 障がい福祉課 障がい者福祉係 0857-30-8217
松江市 障がい者福祉課 障がい者政策係 0852-55-5304
倉敷市 障がい福祉課 086-426-3305
呉市 障害福祉課 給付グループ 0823-25-3135
福山市 障がい福祉課 企画管理担当 084-928-1062
下関市 障害者支援課 給付係 083-231-1917
高松市 障がい福祉課 生活支援係 087-839-2333
松山市 障がい福祉課 社会参加担当 089-948-6353
高知市 障がい福祉課 地域生活支援室 088-823-9378
久留米市 障害者福祉課 障害施策推進チーム 0942-30-9035
長崎市 障害福祉課 総務企画係 095-829-1141
佐世保市 障がい福祉課庶務係0956-24-1111
大分市 障害福祉課 097-537-5786
宮崎市 障がい福祉課 生活支援係 0985-25-2111
鹿児島市 障害福祉課 障害福祉係 099-216-1273
那覇市 障がい福祉課 企画・庶務グループ 098-862-3275
厚生労働省ホームページ:ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 福祉・介護 > 障害者福祉 > 身体障害者補助犬 > 1身体障害者補助犬情報
URL: https://www.mhlw.go.jp/content/000784800.pdf
特定非営利活動法人日本補助犬情報センター https://www.jsdrc.jp/
認定特定非営利活動法人全国盲導犬施設連合会 〒162-0065東京都新宿区住吉町5−1吉村ビル
http://www.gd-rengokai.jp/ 03-5367-9770
一般社団法人日本身体障害者補助犬学会 〒669-1535 兵庫県三田市南が丘 2 丁目 6-12 株式会社スイッチオンサービス内 http://www.jssdr.net/ 079-555-6117
身体障害者補助犬法の概要(平成14年5月29日法律第49号)
〇施行日:平成14年10月1日 〇一部改正:平成19年12月5日
【目的】良質な補助犬の育成、補助犬使用者の施設利用の円滑化をもって、身体障害者の自立及び社会参加の促進に寄与する
【定義】〇盲導犬:道交法で定める盲導犬 〇介助犬:肢体不自由のある方のためにものの拾い上げ及び運搬等の肢体不自由を補う補助を行う犬 〇聴導犬:聴覚障害のある方にブザー音等を聞き分け、使用者に必要な情報を伝え、必要に応じ音源への誘導を行う犬
→補助犬の訓練に関し必要な事項は省令で定める
【参考】身体障碍者福祉法(報告の徴収等)
認定を行う法人の指定は、身体障害者更生援護施設を経営する社会福祉法人について適用されることが想定される。 ・介助犬、聴導犬の認定については、省令に基づき行うとともに、以下についても指針として活用されるべきことを通知。介助犬の認定要領。聴導犬の認定要領。「介助犬及び聴導犬の認定基準等に関する検討会」(厚労省策定:平成14年)
(参考)盲導犬関連法等
【参考】盲導犬訓練基準等の策定・改訂の経緯
※訓練3計画のほかに「盲導犬認定計画」も策定されている。
※上記の基準・計画は11の盲導犬育成施設が合意し、日盲社協盲導犬委員会で策定され、国家公安委員会に提出。
※この手引きは、厚生労働科学研究「身体障害者補助犬の質の確保と受け入れを促進するための研究」(2019 年度~2020 年度 課題番号:19-GC2-001)の成果物としてまとめたものです。
※この手引きは、クリエイティブ・コモンズ(CC BY-NC-ND 表示-非営利-改変禁止 )ライセンスの下でライセンスされています。
https://creativecommons.jp/licenses/ イラスト:NPO 法人 MAMIE